2019 Fiscal Year Research-status Report
成層圏力学場が気候へ与える影響 -成層圏-対流圏間の力学的結合過程の理解の深化-
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18K03743
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
江口 菜穂 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (50378907)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成層圏対流圏間力学的相互作用 / 熱帯対流圏界面遷移層 / 熱帯気象 / 長期変動 / 数値実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究において、成層圏突然昇温(Sudden Stratospheric Warming; SSW)時に熱帯下部成層圏から上部対流圏が断熱的に降温し、そこでの静的安定度が弱まることで熱帯域の積雲対流活動が活発化することが明らかとなっている [Eguchi et al., 2015]。今年度は全球非静力学モデル (NICAM) の出力データを、熱帯域の積雲対流の海陸差に着目し、解析を実施した。 SSW 発生初期に、アフリカ、南米大陸上の積雲対流活動が活発化した。これは大陸上の積雲対流が熱帯対流圏界面遷移層 (Tropical Tropopause Layer; TTL) に貫入するくらい背が高くかつ孤立的 (数10㎞スケール) であるため、より成層圏の変化に敏感に反応するためと考えられる。また数日後にインド洋の南緯10度付近に帯状 (東西方向) に積雲対流域が形成されていた。ここは海面水温が高く、積雲対流が発生しやすい環境に加え、アフリカ大陸の積雲対流から発生した赤道ケルビン波がTTLに静的不安定領域を付随して東進することによって、積雲対流を伴ったケルビン波 (Convectively coupled Kelvin waves) となったと考えられる。この波が海洋大陸に到達した頃、そこでの積雲対流が活発化した。アフリカ大陸上と海洋大陸・西部太平洋域で積雲対流の活発開始時期が5日程度の差が生じていたことになり、これはSSWによる成層圏南北循環 (Brewer-Dobson循環) 場の下部成層圏の上昇流の強化による効果が積雲対流雲の海陸間で異なること (雲頂高度や組織的か孤立的かの違い、背景のTTL内の環境場の違い等) に加え、アフリカ大陸上で発生した赤道ケルビン波がもたらす静的安定度弱化の効果が時間差でやってくることが理由と考えられる。この結果を国際学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
衛星観測データおよび客観解析データを用いた長期間の成層圏力学場の熱帯域の対流活動に与える影響の解析を実施している。他方、今年度実施予定であった数値実験データの解析は、数値実験データ (特に成層圏力学場の重要な要素である準2年周期変動がよく再現されるモデル群の比較実験) の公開が今年度内に実施されなかったため、数値実験データの解析は着手できなかった。次年度初めには公開される見込みで、成層圏力学場の再現性のよい数値実験データの解析は次年度に着手する。 またこれとは別に成層圏力学場の影響をより直接的に明らかにすることが可能な、全球非静力学モデルの実験準備を今年度内に着手しており、次年度前半に計算を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
衛星観測データおよび客観解析データの長期間解析を加速させると同時に、公開された数値実験データの解析を実施する。客観解析データの解析から、注目すべき期間、イベントを把握しつつあることから期間、ポイントを絞っての解析が可能と考えられ、解析の効率化を図る。 さらに、全球非静力学数値モデルを用いた成層圏の力学過程をコントロールした実験を実施予定である。それにより、成層圏力学過程に対する熱帯の積雲対流活動 (サイクロン含む) の応答の詳細が明らかとなることが期待される。
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Causes of Carryover |
年度末に海外渡航を予定していたが、社会的事情を考慮して渡航を断念した。次年度は数値実験データの解析前の事前処理(加工等)を実施する解析要員の人件費として使用する。また学術論文の英文校閲費、投稿料等の雑役務費として利用する。また結果をまとめるための関連研究者との研究集会を実施する。
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Research Products
(19 results)