2019 Fiscal Year Research-status Report
電磁プラズマ波の精密観測による地殻活動検知と短期地震予測法の確立
Project/Area Number |
18K04129
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤井 雅文 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (60361945)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電磁気学 / 電磁波伝搬 / 地表面プラズマ波 / 電磁相互作用 / フィルタ / 地殻変動 / 短期地震予測 / FDTD解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電磁気学、電磁波工学および電子物理化学を基礎とする新しい原理による短期地震予測法を確立することを目標としている。地震の直前には地殻の岩盤に圧力が加わることにより、応力誘起された大量の電荷が岩石内部から放出される。そしてこれらが地表面に出現し滞留することで上空の電波によって励起されプラズマ振動する。これがさらに上空の電波伝搬に影響を与え、通常の状況では生じ得ない遠方への超長距離伝搬が引き起こされることが明らかになっている。本研究では特に地殻活動に伴う電磁気現象を理論と実験観測の両面から考察し、地震の前に地殻に作用する応力の変動を精密な電波観測により広範囲に検知し、その観測精度を向上することにより地震の短期予測を実現することを目指している。 我々はすでに上記の電波観測のため受信機のノイズ低減が可能な超高Qフィルタを独自開発し、これまで困難であったノイズの大きい都市部において精度の高い観測を可能にし、富山県富山市、静岡県磐田市、大阪府堺市の3地点における電波強度を継続的に観測してきた。 更に、日本各地の地形を数値モデル化し、地表面で生じるプラズマ振動との相互作用によりラジオ波が山地や丘陵を越え遠隔地まで到達する見通し外伝搬のメカニズムを明らかにした。このような地球規模の地表面におけるプラズマ波を地表面プラズマ波(Terrestrial Surface Plasma Wave)と名付け、これが地震直前に観測される電磁波の異常伝搬の原因であることを示した。 これまでの約5年間の観測データを統計的に解析した結果、本電波観測において異常値が観測された場合に3日以内に観測地域でマグニチュード4以上の地震が発生する確率は82%であった(的中率)。また逆に、観測地域におけるマグニチュード5以上の地震が発生した場合に、その89%において異常信号が観測されていた(予測率)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの観測設備を拡充し、遠隔観測データを効率よく転送できるようデータ分割と再構成のプログラムを開発し、任意の場所から観測地点のデータを実時間で閲覧できるようにした。蓄積された観測データを自動的に集計して表示するシステムを構築し、これを用いてこれまでの5年間の観測データを統計的に解析した。その結果、上記のように、短期の地震予測において高い的中率と予測率を同時に得られていることが明らかとなった。これらの電波観測のデータと気象庁による地震データベース、ラジオダクト発生状況、スポラディックE層発生状況とを体系的に比較することにより、電波の異常伝搬が生じるメカニズムについてより良い知見が得られつつある。電波観測におけるノイズ低減のためのフィルタに関して特許を出願し現在審査中である。上記の統計解析結果を学術誌に投稿し、これも審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究方針を維持し、さらに信頼性の高い結果を得るように実施する。特に、(1)観測拠点、設備、機器の拡充と調整、(2)電磁波観測信号の時系列データの機械学習による解析、(3)地震に伴う地殻変動、その他の自然現象、および電磁波伝搬の相互作用の理論的モデル化と電磁界解析の3点について総合的に研究を進展させる。
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Causes of Carryover |
年度内に論文を執筆、投稿し、掲載が2020年度以降に予定されることとなった。当該論文には長期間の観測データを掲載する必要からページ数が増大し、論文掲載料が通常よりも高額となることが予想されたため、計画よりも研究費を多く残しておく必要があった。当該論文は現在審査中であり、審査の終了は今年度中に期待されることから、審査通過すれば計画通りの研究費を使用することとなる。
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