2019 Fiscal Year Research-status Report
強靭な物流を実現するための交通とサプライチェーンの動的スーパーネットワーク解析
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18K04389
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 忠史 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (80268317)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サプライチェーン / 強靱度 / 不確実性 / 最適化 / 多期間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画二年目に相当する令和元年度は、動的なスーパーネットワーク解析手法の開発に努めた。交通とサプライチェーンのスーパーネットワーク上での製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者などの行動を動的に記述し、災害に対する交通ネットワーク(TN)やサプライチェーンネットワーク(SCN)の状態遷移の不確実性を動的かつ確率的に考慮して、TNやSCNの諸量(取引量、輸送量、価格、拠点立地など)を導出し、それら諸量を基にして、ネットワークの強靭度を算定した。構築した手法の妥当性については、初年度および本年度のヒアリング調査結果と解析から得られた推定値とを比較して、その整合性を確認した。開発した手法を用いて、実際のサプライチェーンを援用した仮想のネットワークを対象に数値解析を行うことにより、物流の観点からネットワークの強靱性を評価した。 初年度と本年度のヒアリング調査結果から、SCNの形態と諸量(取引量、輸送量、価格、拠点立地など)や、それらの災害による動的な変化に関する知見が得られた。これらの調査結果に、TNやSCN関連の文献からの知見を併せて、ネットワークの強靱度算定方法の精緻化を図った。強靱度算定方法の精緻化については、比較対象となる時点でのネットワークの強靭性算定にも注力した。不確実性がもたらす費用のばらつきによって、強靭度が変動することに注目し、平均値モデルを確立するとともに、期待残差最小化モデル(ERMモデル)の適用も試みた。解析手法を用いた数値計算には、上述の調査結果に加えて、既存の交通・物流調査の結果も加味したインプットデータを活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、二年目の主たる研究項目は、動的なスーパーネットワーク解析手法の開発であった。具体的には、(1)製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者などの行動を動的に記述すること、(2)災害に対するネットワークの状態遷移を不確実性かつ確率的に考慮すること、(3)ネットワーク諸量(取引量、輸送量、価格、拠点立地など)を導出・活用して、強靭度を算定すること、(4)数値計算を実施して、ヒアリング調査結果と解析から得られた推定値との整合性を検証すること、(5)初年度に作成したインプットデータを数値計算に適用することであった。 「研究実績の概要」で述べたように、本年度において、上記(1)~(5)のいずれも、当初の計画通りに進行した。上記(3)と(5)においては、初年度の調査結果だけでなく、本年度に実施したヒアリング調査結果によって、ネットワーク諸量の定量化や、数値計算のためのインプットデータを補完した。上記(2)と(4)については、比較的簡便な平均値モデルの確立(定式化と解法)に従事するとともに、より複雑な期待残差最小化モデル(ERMモデル)への拡張も試みた。さらに、実際のサプライチェーンを援用した仮想のネットワークを対象に数値解析を行うことにより、物流の観点からネットワークの強靱性も評価した。 以上より、研究計画との整合性、および、計画時以上の研究の精緻化を考慮すれば、本研究は、おおむね順調に進展しているものと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最大800文字(1600バイト)、改行は5回まで入力可。ただし、一時保存の際は1600文字(3200バイト)まで入力できます。 (全角文字は2バイト、半角文字は1バイトと換算)
研究実施計画最終年度に相当する令和二年度は、動的なスーパーネットワーク解析手法を内包したネットワークの最適設計モデルを開発する。また、昨年度までに開発した多期間最適化モデルを、期待残差最小化モデルとして確立する。 後者については、ネットワーク上における製造業者、卸売業者、小売業者、消費者、物流業者などの行動の動的記述を精緻化し、災害に対する不確実な状態遷移を動的かつ確率的に考慮して、より詳細に強靭度を算定する。強靱度の現実的な評価のためには、インプットデータや、比較対象となる実現値データの精度向上が必要である。そのために、既存の調査結果や関連文献の精査、ならびに、国内外の企業や関連研究者に対するヒアリング調査を継続的に実施する。 前者の最適設計モデルについては、後者の組み込みも考究する。前者のモデルは、交通や物流に関する施策実施の有無や実施の程度を決定する大規模な組み合わせ最適化問題であり、厳密解の求解が困難である。それゆえ、文献調査を基にして、メタヒューリスティクスなどの有力な最適化手法を精査し、大規模な問題に対して高精度で高速に求解可能な近似最適化手法を適用する。多様な数値計算を実行し、強靭な物流を実現するうえで有力な交通施策や物流施策について考究する。
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Causes of Carryover |
本年度は、ネットワーク諸量の定量化や数値計算のためのインプットデータを確立するために、企業や関連研究者へのヒアリング調査のための旅費を計上していた。しかし、昨年度の調査結果の精査、学内利用可能な電子ジャーナルの利用、既存文献の活用に努めた結果、旅費が節約されることになり、約7万円の次年度使用額が生じた。 研究実施計画最終年度に相当する令和元年は、(1)初年度と昨年度の研究成果を発表・投稿する年度でもあり、(2)開発した手法を用いて多様な数値計算を実施する年度でもある。次年度使用額は、(1)については、研究成果の作成・発表・投稿に、(2)については、数値計算補助の謝金に、それぞれ充当する予定である。
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