2019 Fiscal Year Research-status Report
Urban Planning History of the Midlle East and North Africa region from the viewpoint of Japanese cooperation-Beyound the Islamic city-
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18K04530
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松原 康介 筑波大学, システム情報系, 准教授 (00548084)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ATBAT / 進化型計画論 / 「イスラーム都市」論 / ダマスクス / ヘレニズム / アブー=ルゴド / キャンディリス / アルジェ |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる「イスラーム都市」論の問題が、歴史学等の都市研究における認識論的問題であるだけではなく、むしろ実践的に都市を計画していく上での問題であることを指摘した、アブー=ルゴドの議論を受け、より現代的で住民生活に基づく視点から、中東・北アフリカ地域の都市計画史の一端を明らかにすることが、本研究の目的である。本年度は、昨年度のアルジェのスラム事業に関する論点整理を踏まえて、住民自身による空間のカスタマイズ、すなわち伸縮自在の「進化型計画論」について発表を行った。 建築学会論文「戦後仏語圏における「最大多数のための住まい」から「進化型住宅」への展開」では、建築家が躯体を提供し、住民がこれをカスタマイズしていくという番匠谷堯二「正方形の家」のコンセプトが、国際交流組織ATBATにおける共同研究を通じてキャンディリスに影響を与え、やがてパリなどフランス都市の郊外において実現されていった経緯を解明した。また関連して、同学会大会発表「ジョルジュ・キャンディリスの計画論「進化型住宅」における番匠谷堯二の貢献について」では、関連図面分析に特化した発表を行い、特にキャンディリスによるバニュル・シュー=セズ団地の住宅計画に「正方形の家」との強い関連性が読み取れることを示した。 一方、都市計画学会論文「ダマスクス1968年計画におけるヘレニズム基盤の再構築事業」では、「古代都市の再構築」計画において、ヘレニズム時代のグリッド型の都市基盤を永遠の躯体とみなし、イスラーム期以降における空間の増改築を住民によるカスタマイズとみなす、「進化型計画論」における縮退プロセスとして位置づけられる可能性を示唆した。 イランでの国際会議発表を行った他、その途上でアテネのパルテノン神殿、イオニア地方(現トルコ)におけるエフェス、プリエネ、ミレトス等のヘレニズム遺構を調査訪問し、そのグリッド型基盤の概略を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画目標における「イスラーム都市」論の乗り越えは、ダマスクスにおけるヘレニズム基盤とイスラーム的街路の融合に関する1968年計画の対応を再評価することで一つの達成をみたと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ対応が懸念されるものの、現時点では当初計画通り、2020年度を最終年度として完了を目指している。具体的には、以下の活動計画による。 1.アルジェ研究の推進 2.進化型計画論研究、ダマスクス研究の海外発表 3.最終成果報告書の出版 4.フランスにおける成果報告会の開催 なお2については、建築学会論文「戦後仏語圏における「最大多数のための住まい」から「進化型住宅」への展開」について同誌編集委員会より英文翻訳論文としてJARに転載することを奨励頂いたこともあり、特に海外発信の重要性の観点から励行したい。
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Causes of Carryover |
コロナ対応により計画を縮小した結果、消耗品費に若干の残額が出ました。来年度に消耗品として活用させて頂きます。
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Research Products
(13 results)