2019 Fiscal Year Research-status Report
表面酸化によるアルミニウム鋳鉄の耐アルミニウム合金溶湯溶損性向上機構
Project/Area Number |
18K04802
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
淺野 和典 近畿大学, 理工学部, 教授 (50268471)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 鋳鉄 / アルミニウム / 溶損 / 酸化皮膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミニウム合金鋳物に用いる金型は、生産性向上や低コスト化の観点から、その耐アルミニウム溶湯溶損性が求められている。本研究では、低コストで優れた耐溶損性が期待できるアルミニウム添加鋳鉄に注目し、これに加熱処理を施して表面に耐溶損性に優れた酸化皮膜を生成させた試料について、その耐溶損性を明らかにすることを目的としている。 昨年度には、加熱処理によってアルミニウム添加鋳鉄の耐溶損性は著しく向上することを明らかにした。溶損途中の鋳鉄試料を溶湯から取り出して元素分析した結果、酸化皮膜とアルミニウム合金溶湯との界面にマグネシウムを含む酸化物が認められたことから、鋳鉄試料がアルミニウム合金溶湯中で溶損する過程で、酸化皮膜と溶湯との化学反応が生じることが示唆された。この反応を制御することで本鋳鉄試料の耐溶損性をさらに向上させることが可能になると考え、本年度はとくにアルミニウム合金溶湯中のマグネシウム含有量を変化させ、これが鋳鉄試料の耐溶損性に及ぼす影響を調べた。 実用アルミニウム合金鋳物の組成範囲内では、マグネシウムを含まないAl-Si合金溶湯に浸漬させた場合に溶損までの時間が最も長く(49 h)なった。マグネシウム含有量の増加ともに溶損までの時間が短くなり、0.75 mass%付近で最短となった後、それ以上マグネシウム含有量が増加すると溶損までの時間が再び長くなった。溶損途中の試料の元素分布状態を分析した結果、溶損までの時間が短かった0.75 mass%付近の場合、皮膜と溶湯界面の近傍にMgAl2O4が多く見られたのに対し、マグネシウム含有量がさらに増加するとMgOが認められるようになった。このことから、MgAl2O4の生成により試料の溶損が進行しやすくなる一方、MgOが生成することで試料の溶損が抑制されたと考えた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鋳鉄試料の溶損挙動に及ぼすアルミニウム合金溶湯組成の影響については、申請時には2020~21年度で明らかにしたいとしていたが、上記「研究実績の概要」にも記載の通り、これらの結果は19年度でおおよそ得られており、申請時の計画以上に進展している。一方、得られた結果の考察が不十分なため、申請時に計画していた本年度中の学会発表、論文投稿を行うことはできなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
試料の溶損過程で溶湯との界面近傍に見られた酸化物の生成状況と、耐溶損性との関係をより詳細に調べる。あわせて、アルミニウム含有量を変化させた試料を加熱処理し、酸化皮膜を持つ鋳鉄の耐溶損性に及ぼすアルミニウム含有量の影響を明らかにしたい。 これまでに得られた研究成果について、学会発表・論文投稿を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
交付申請書提出時に計画していた本年度分の旅費(400,000円)を使用しなかったため。 実験は申請時の計画よりやや進展しているものの、得られた結果に対する考察がまだ十分でなく、学会発表するに至らなかった。次年度は学会発表を複数回行う予定であり、そのための旅費も申請時よりも多くなる見込みである。
|