2020 Fiscal Year Research-status Report
異種ドメイン連結型バイオコンジュゲーションによる細胞表層機能材料の開発
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18K04855
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 助教 (60595148)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己組織化 / バイオコンジュゲーション / 酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自己組織化における自己選別性を発現する両親媒性ペプチド (PA) ペアを利用することで、複数種類の生体分子を一つの構造体上に局在集積させる「集積化バイオコンジュゲーション技術」の確立を目指している。自己組織化材料の持つ動的性質と局在性を活用することで、細胞表層で機能する材料を開発することを最終目標とした。前年度までに、互いに非相溶な疎水部を持つ二種類のPAを用い、相分離と共集合を制御可能な条件検討とその分子集合メカニズムの詳細評価を行った。その結果、温度条件がPA間の相分離と共集合に大きく影響を与えること、それにはペプチド間の水素結合やペプチド側鎖の芳香族性置換基間のスタッキング相互作用の温度による変化が影響を与えていることを見出した。これらは、共焦点レーザー顕微鏡を用いた直接観察や各種分光学的手法により解析を行った結果である。 2020年度は、主にペプチド集合体に対するバイオコンジュゲーションの検討を行った。バイオコンジュゲーションの手法として、翻訳後修飾酵素であるトランスグルタミナーゼ (TG) を用いた酵素的手法を用いることとし、TG反応性の配列を導入した複数種類のPAの集合制御とTG反応性を調査した。結果、これらのPAはpHに依存した自己組織化挙動を示し、TG反応性も同様にpHに依存し、高pH条件下において高い反応性を示した。蛍光分子を導入したPA集合体の直接観察にも成功し、以上の結果について1報の学術論文と5件の学術集会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までは、本研究で用いるPAの基本設計と自己組織化における相分離と共集合の評価、およびそのメカニズムの検証を行ってきた。2020年度は、PA集合体上へのバイオコンジュゲーション手法の一つとして、翻訳後修飾酵素TGを用いた機能性分子の集積化を行った。TG反応部位をPAに導入し、各種条件下における自己組織化挙動を詳細に評価した。その結果、pHに依存して分子間相互作用(水素結合、スタッキング相互作用)や自己組織化構造を変化させることを確認した。TG反応性もpHに依存し、TGが反応性を持つpH 5-8の間において、高pHほど高い反応性を示すことが明らかとなった。また、これらの条件下で蛍光性機能分子をPA集合体に導入したコンジュゲート材料に関し、共焦点レーザー顕微鏡により直接構造体を観察した。 以上のように、生体分子の集積化が可能な手法を一つ確立し、この結果に関して学術論文1報と学術集会5件で発表することができた。しかし、異種分子の集積化およびそれを用いた細胞機能の操作という最終目標を達成するには至らなかったため、やや遅れていると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、異種分子の集積化を達成するための、TGとは直交性の反応基をPAに導入する。具体的には、共有結合性のHuisgen環化付加反応、あるいは非共有結合性のavidin-biotin相互作用の利用を予定している。Huisgen環化付加反応のためのアルキン基、あるいはavidin-biotin相互作用のためのbiotin基をPAに導入する。生体分子として、まず蛍光顕微鏡で評価が可能な蛍光タンパク質(EGFP、dsRed等)を用いる。これにより概念実証が可能となった後、細胞表層機能材料の創製へ向け、細胞接着性タンパク質等の生体分子の集積化を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究は、PA材料作製に係る消耗品の購入や研究成果発表の論文投稿料、学会参加費等、予算の範囲内で計画に沿って実行することができた。COVID-19の影響で学術集会がオンライン開催となったため、旅費の支出が不要となり、次年度使用額が生じた。次年度以降、材料の作製や分析、成果発表に有効活用するため、次年度使用額とした。研究費は、主にPA合成、タンパク質合成用の材料費、細胞実験用試薬・消耗品、分析用の各種試薬・消耗品、研究成果発表のための論文投稿料や旅費等に充てる。
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Research Products
(6 results)