2022 Fiscal Year Research-status Report
光触媒/多波長吸収金属ナノワイヤーコアシェルアレイによる可視光利用高効率水素生成
Project/Area Number |
18K04877
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高瀬 浩一 日本大学, 理工学部, 教授 (10297781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 智弘 関西大学, システム理工学部, 教授 (80581165)
田中 啓文 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (90373191)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金ナノワイヤー / 酸化チタン/金ナノワイヤーコアシェル構造 / 水分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、局在表面プラズモン吸収を利用するため、金ナノワイヤーの作製が必要である。我々のグループでは、陽極酸化ポーラスアルミナのナノ細孔をテンプレートとして用い、金ナノワイヤーの作製を目指している。ポーラスアルミナの底部には、バリア層と呼ばれる絶縁膜が存在するので、これを上手く除去しなければ、電解メッキでの試料作製ができない。そこで、電界降下処理とエッチングを組み合わせ、バリア層の除去を進めてきたが、目標とした500nm程度の長さをもつナノワイヤーの成長には、至っていなかった。本年度では、エッチング条件等を見直した結果、300nm程度のナノワイヤーの埋め込みに成功した。また、自立した金ナノワイヤーを作製するため、ポーラスアルミナのエッチング条件を色々と試すことで、自立した金ナノワイヤーを作製することができた。 この金ナノワイヤーに対して、原子層堆積法(ALD)により酸化チタンを7nm堆積させ、最終的に、酸化チタン/金ナノワイヤーコアシェルの作製に成功した。金ナノワイヤーが密に成長しているため、多くの部分で金ナノワイヤー上部に酸化チタンが堆積してしまっていたが、一部分ではナノワイヤーを酸化チタンで包み込む構造が確認された。 このコアシェルを用い、530nmのグリーンレーザー照射下での水の分解実験を行なった結果、ごく少量であるが水素の発生が確認できた。得られた水素が少量となってしまった原因としては、レーザーポインターの出力が1 mWであったこと、電池駆動であるため、照射時間が1時間と限定されたこと、レーザー光の照射面積が 1mm程度であったことなどが挙げられる。このほか、ALDで堆積した酸化チタンは、アモルファス状態であり、結晶性でないため、半導体中の電子移動が阻害されている可能性もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度までに、ポーラスアルミの細孔への金の埋め込みができるようになった。ポーラスアルミナのナノ細孔の底部には、バリア層と呼ばれる絶縁膜があり、電界メッキによる金の埋め込みを実施するには、バリア層の除去が必須である。これまで、バリア層の除去を行なってきたが、場所によってバリア層が薄く残存するところがあり、このため、ナノワイヤーを膜全体に渡って作成できないでいた。これを解決するために、バリア層除去の条件を見直し、更に、細孔幅を広げる加工も施すなどして、300~400 nm程度の金ナノワイヤーを均一に作成できるようになった。 さらに、本研究の目的を達成するためには、ポーラスアルミナの除去が必要であり、化学エッティングにより、アルミナの除去を行なった。ここで、アルミナを完全に除去してしまうとナノワイヤーが自立せず、倒れてしまうので、ポーラスアルミナの一部を残す必要があり、この点が研究における工夫点となった。 このようにして準備した自立した金ナノワイヤーに対して、ALDで酸化チタンを成膜し、当初の目的である酸化チタン/金ナノワイヤーコアシェル構造を得た。 この試料に対して、グリーンレーザーポインターを用いた水分解実験を行なった。レーザーの出力が1 mWと非常に小さく、また、電池駆動のため1時間以上、レーザー照射ができなかったので、得られたガスは少量であったが、このガスをガスクロマトグラフィーで調べたところ、水素であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度では、理想的ではないにせよ酸化チタン/金ナノワイヤーコアシェルの作製に至った。この試料を用いた水分解実験では、出力1mWのグリーンレーザーを使用しているため、光の照射量が不十分である可能性がある。また、このレーザーは、いわゆる、レーザーポインターであるため1時間以上、安定して光を照射することができていない。さらに、光触媒反応が起きているのは、レーザーが照射された直径1 mm程度の領域だけである。レーザーパワーと照射時間および照射面積の3つのパラメータが水分解を十分行うには、些か不適格であったと考えられる。2023年は、レーザー条件を見直し、出力が100倍以上高いものを用いた実験を行いたい。これと同時に、照射時間も10倍にしたい。 このような環境を整えて、同じ試料を用いて、再度、水分解実験に挑む。
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Causes of Carryover |
2022年12月に自立した金ナノワイヤーがいくつか得られ、年度末に酸化チタン/金ナノワイヤーコアシェル構造の作成にこぎつけた。年度末であったため、有用なレーザーの準備ができず、手元の装置で実験する方法として、今回は、グリーンレーザーポインタを使用することにした。十分な時間があれば、レーザーの準備もできていたかもしれない。 2023年度は、レーザー光強度が100 mW以上でAC100 Vで駆動するレーザーをレンタルすることで、再度、水分解実験を行いたい。この準備で、レーザーポインタ使用よりも1000倍以上高い光触媒活性が期待でき、収集される気体の量も多くなると期待される。 このため、残った金額をレーザーのレンタル費用にあてる予定である。
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