2019 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ波を活用した担持金クラスター触媒の調製と分子状酸素による高選択的分子変換
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18K05203
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹歳 絢子 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任准教授 (50533056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 触媒 / 金クラスター / 金ナノ粒子 / 酸素酸化 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高難度反応のひとつであるベンゼンの直接官能基化が可能となる新しい金触媒の開発を目的としている。金をクラスター化することで、金と担体との接合界面が増えることから、ナノ粒子触媒では見られなかった触媒特性の発現をねらう。担持金クラスター触媒調製の手法として、前年度に引き続き、マイクロ波照射を用いる検討を行った。マイクロ波吸収効率の高い酸化マンガンにも適用可能な手法とするため、乾燥とともに還元処理までマイクロ波照射により行うことを試みた。マイクロ波照射を乾燥、焼成と2段階で行ったサンプルの金の状態(価数)をX線吸収分光法により調べたところ、Au(0)に還元されていたのは約60%だった。完全に還元するにはさらなる条件検討が必要であることがわかった。 また、有機合成反応においてもマイクロ波加熱を用いることで、従来加熱では実現できなかった反応の進行を目指し、酸化コバルト担持金触媒を用いてトルエンのアンモ酸化を行った。マイクロ波照射の有無により、転化率、選択性がわずかながら異なることがわかった。 さらに、得られた金触媒を香料となる脂肪族エチルエステルの合成に適用した。反応性の低い長鎖脂肪族アルコールである1-オクタノールからの直接エステル化を検討し、種々の金属酸化物に担持した金触媒を用いてスクリーニングを行った。酸化亜鉛担持金触媒を用いたメタノールとの反応ではオクタン酸メチルが選択率94%で得られた。一方、エタノールとの反応では、エタノールの酸化も同時に起こり、アセトアルデヒドを経由して、酢酸エチルや酢酸オクチルが副生したものの、オクタン酸エチルが主生成物として得られた(転化率68%,選択性51%)。オクタノールから直接オクタン酸エチルを得る反応は、これまで塩基存在下での報告しかなかったが、酸化亜鉛担持金触媒により塩基無添加での反応を達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的通り、マイクロ波乾燥という手法を取り入れることで、高活性な金触媒が得られた。マイクロ波吸収効率の高い金属酸化物にも適用可能な手法とするため、乾燥、焼成と二段階のマイクロ波照射により金を還元することを試みた。しかし、マイクロ波吸収効率の高い酸化マンガンでは未だクラスターサイズに制御出来ておらず、さらなる条件検討が必要である。また、有機合成反応においてもマイクロ波加熱を用い、トルエンのアンモ酸化を試みた。マイクロ波照射の有無により、わずかながら転化率や選択性が異なったことから、マイクロ波照射により反応性や選択性を制御できる可能性がある。さらに得られた金触媒は、香料となる脂肪族エチルエステルのアルコールからの直接合成に適用できた。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロ波照射による担持金クラスター触媒調製の手法として、マイクロ波吸収効率の高い金属酸化物にも適用可能とするため、乾燥とともに還元処理までマイクロ波照射により行う条件検討を引き続き行う。また、ベンゼンからフェノールやアニリンへの直接官能基化の高難度反応への挑戦に向け、ベンゼンよりも反応性の高いトルエンを基質とするアンモ酸化を引き続き検討する。種々の金属酸化物担持金触媒を用いてスクリーニングを行い、マイクロ波照射の有無による反応性や選択性の違いを評価する。触媒の最適化を図り、従来加熱では実現できなかった反応の進行を目指す。
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Research Products
(11 results)