2018 Fiscal Year Research-status Report
エポキシシクロヘキセンジオン類によるADP/ATP輸送体の凝集メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K05458
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村井 正俊 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80543925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武範 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 講師 (80457324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ADP/ATP輸送体 / 阻害剤 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアADP/ATP輸送体(AAC)は、ミトコンドリア内膜上でADPとATPの交換反応を行う分子質量約30 kDaの膜輸送体であり、マトリックス側で生産されたATPを細胞質へ供給する役割を担っている。ウシ心筋ミトコンドリアAACの新規阻害剤を探索する過程で、epoxycyclohexenedione類(ECH類)がAACによる[14C]ADPの取り込みを阻害することを見出した。2018年度は、ECH類の作用機構を解明することを目指した。 ECH類は分子内に2箇所の求電子性反応点を持つため、AACの阻害には求核性アミノ酸残基との共有結合形成が関わっている可能性が高い。そこで、アルキル側鎖にクリックケミストリーを指向した末端アルキンを持つECHD誘導体を合成した(AMM-120)。ウシ心筋亜ミトコンドリア粒子(SMP)をAMM-120存在下でインキュベートし、2次タグとなる蛍光タグ(TAMRA-N3)をクリックケミストリーによって導入したところ、AACに相当するバンドに蛍光バが観察された。また、システイン修飾剤であるN-エチルマレイミドで、AAC表面上の3箇所のシステイン(Cys57, Cys160, Cys257)のうち、Cys57を選択的に修飾した場合、AMM-120による化学修飾が顕著に抑制されたことから、Cys57が主たる修飾部位であることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、ECH類はAACに存在するシステイン残基と特異的に化学修飾することでAACを阻害することがわかった。また、後述の通り、高濃度のECH類でSMPを処理した場合、AACの顕著な凝集が誘導されるというユニークな現象を見出した。このような理由から、研究は概ね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ECH類に関する特筆すべき現象として、より高濃度(50-100 micro-M)のECHD類でウシ心筋SMPを処理すると、還元・非還元条件に関わらずAACの顕著な凝集が誘導され、SDS-PAGEのゲル上からAAC単量体のバンドは完全に消失した。このような凝集誘導効果は、BKAやCATRでは認められない極めてユニークな現象である。ECHD類によるAAC選択的な凝集誘導は、NEM処理によって抑制されたため、システイン修飾に起因することが示唆された。以上の結果より、ECHD類は既知のAAC阻害剤とは異なる作用機構を有する新規なAAC阻害剤であることがわかった。
2019年度以降は、ECH類によるAACの凝集メカニズム解明に焦点を当てて研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度は、生化学実験の比率が多かったため、有機合成関係で計上した予算に余りが発生した。2019年度は実験における有機合成の割合が増える予定なので、余剰の予算を含めて計画的に使用したい。
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Research Products
(19 results)