2019 Fiscal Year Research-status Report
Genetic and physiological analysis of sulfur uptake by traditional Japanese Brassicaceae vegetables
Project/Area Number |
18K05508
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
伊藤・山谷 紘子 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80648684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオウ / 伝統野菜 / 硫酸イオントランスポーター / アブラナ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の含硫二次代謝産物の多くがヒトの健康に関する機能性成分であり、この含硫二次代謝産物の植物体内での含有量を自由に調節し高めることができれば、摂食目的に適う機能性成分高含有野菜を育成することができると考えている。そのためには、まず高イオウ含量の材料が必要であり、本研究では、わが国で栽培されている多数のアブラナ科伝統野菜の中から、硫酸イオン供給量に比例して体内のイオウ含有量が顕著に増大する野菜種を選抜し、大量のイオウを取込む仕組みと取込んだイオウの代謝先を検討する。これをモデル植物として、植物のイオウの高吸収と代謝系制御に関する知見を分子生理学および代謝工学的な手法で得ることを目的とする。 アブラナ科伝統野菜を第2本葉展開まで1/10 str. Hoagland(0.1 mMイオウ)水耕液で育てた伝統野菜の実生に「水耕液イオウ欠如処理(0 mM)」と「水耕液イオウ濃度増加処理(0.2、0.4、0.8 mMイオウ処理)」を施し本葉10枚まで栽培しサンプリングした。サンプリングした植物は、植物体地上部イオウ濃度、地上部根部の硫酸トランスポーター遺伝子の発現量を調べた。 その結果、通常の植物ではイオウ含有率が0.3%程度であるのに対し、供試したアブラナ科伝統野菜の中には1%を超える硫黄含有率を示す品種も存在することが分かり、水耕液イオウ濃度の上昇に比例して植物体内にイオウを蓄積する品種を選抜することができた。さらに、イオウ含有量と地上部乾物重との間に高い正の相関が存在し、イオウ含有量が生育に与える影響は著しく大きいことが示された。しかし、根域イオウ濃度への生育や吸収への応答には品種間差が存在し、これらの応答の差は硫酸イオントランスポーター遺伝子発現量や、システイン合成酵素活性の増減だけでは説明できないことも明らかとなった。現在、これらの成果を欧文誌へ投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は平成30年度に引き続き、アブラナ科伝統野菜の栽培を行い、新たに26品種の伝統野菜について、水耕液イオウ濃度を変化させた時の乾物重の変化および植物体内中イオウ濃度を調べた。これにより、昨年度と合わせて40品種の伝統野菜の根域イオウ濃度に対する乾物重と体内イオウ濃度の変化を知ることができた。さらに、その中の20品種(葉菜類9品種、根菜類11品種)の硫酸トランスポーターSULTR1グループとSULTR2;1の発現量の測定を行った。さらに有機態イオウ合成の分岐点であり鍵となるO-Acetylserine (thyol)lyaseなどの酵素活性の測定のための実験系を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成30年度、令和元年度に引き続き、新たな伝統野菜を用いて、根域イオウ濃度に対する応答に特徴のある品種の選抜と硫酸トランスポーターの発現量の測定を行う。また、水耕液イオウ濃度増加処理にて顕著なイオウ含有率の顕著な増加が観察された品種に対しては、有機イオウ、無機イオウを分離して測定し、有機イオウを多く含有する品種を選抜する。さらに前年度構築した系を用いて、有機態イオウ合成の分岐点であり鍵となるO-Acetylserine (thyol)lyaseなどの酵素活性の変化を調べる。 また、最終年度なので、論文投稿および学会発表を積極的に進め、これまでに得られた成果を発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度の研究において、実験系の見直しなどにより計画よりも少額で目的を達成できたこと、そしてコロナウィルスの感染拡大により国際学会が中止になったことにより、次年度使用額が生じた。令和2年度は令和元年度で行ったトランスポーター遺伝子の解析に加えて、代謝系の鍵となる酵素遺伝子の発現解析実験のための消耗品費用、そして研究をまとめ発表するための英文校閲費、論文投稿費に使用する予定である。
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