2019 Fiscal Year Research-status Report
イオンビーム突然変異系統を用いたシシトウの不時辛味果発生に関わる遺伝子座の同定
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18K05627
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
村上 賢治 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (40200266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 宗孝 近畿大学, 農学部, 教授 (40301246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カプサイシノイド / フェノタイピング |
Outline of Annual Research Achievements |
シシトウの不時辛味果発現に関する遺伝子解析においては、不時辛味発現形質についての確実なフェノタイピングを行うことが最も重要であると考えられる。2018年度の研究では、低辛味系統×野生型のF1、F2とも、全体的に低辛味側にシフトしており、形質の分離は不明瞭であった。2019年度に、F1集団において、辛味発現程度が遺伝子型を反映しているかを検討するため、2018年の栽培で辛味果が発現したF1株と、発現しなかったF1株からそれぞれの自殖後代F2種子を採種し、栽培して辛味発現を調べた。その結果、どちらも同様な辛味発現の分布を示した。これらのことから、F1株の辛味発現についてのフェノタイピングの困難さが示された。シシトウ果実の辛味発現は、気温をはじめとした環境条件の影響が大きいと考えられ、夏季終わり頃に着果し秋季に成熟する果実で最も辛味が発現することが示唆されたことから、2019年は、より辛味が発現するような条件で栽培、着果させ、F1、F2におけるフェノタイピングをおこなった。その結果、F1では高辛味側、F2では低辛味側と高辛味側への分離が見られ、低辛味は劣性形質であることが示唆された。 2018年度にサンプリングした果実について、次世代シーケンサーによるMut Map法での遺伝子解析の結果では、F2での低辛味集団と高辛味集団に特有な領域が2か所検出された。しかし、それらの領域には多くの遺伝子が含まれ、不時辛味果発現に関わる遺伝子を絞り込んでゆくにはかなりの期間を要することが考えられた。 2019年の結果では、野生型とF1集団において、胎座+隔壁の生体重とカプサイシノイド含量の間に負の相関が示され、無種子果においても、胎座の発育が抑制されると辛味成分生成が促進される可能性が示唆された。この結果は、確実なフェノタイピングを行うために検討すべき課題であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
不時辛味果発現に関する遺伝子解析のための確実なフェノタイピングが、当初想定されていたよりもかなり困難であったこと、解析に用いた野生型と低辛味集団では、辛味発現に関わる遺伝子以外にも遺伝子レベルで違いのあることが判明し、原因遺伝子を絞り込むのにはかなり期間を要していることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
環境条件の影響の再検討、胎座発育と辛味成分生成との関連性の解析などにより、フェノタイピングをより確実なものとするための研究を行う。現在育成している‘鷹の爪’との交雑後代を用い、辛味成分生成の主要な遺伝子であるPun1の量的変異およびシシトウの低辛味形質がPun1発現を抑制するかどうかについて検討する。
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Causes of Carryover |
2018年度の解析結果から、当初想定していたRNAseqによる解析段階への移行にまだ期間を要することが明らかとなり、2019年度はフェノタイピングの再検討を主体に行うこととなった。そのため、RNAseqなどの次世代シーケンサー使用をする実験については、2020年度に実施することとなり、経費を保留したため。本年度は、2018、2019年度の結果をもとに、分子生物学的解析を進めていく。
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