2018 Fiscal Year Research-status Report
釣り餌用スジエビ類および寄生種エビノコバンの侵略性評価:外来種リスト掲載に向けて
Project/Area Number |
18K05688
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斉藤 英俊 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (00294546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 攻 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
河合 幸一郎 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (30195028)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 寄生種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、釣り餌用外来スジエビ類および寄生種エビノコバンの地域集団外からの侵略性について明らかにすることを目的としており、平成30年度は以下の項目について調査を実施した。1)スジエビ類および寄生種の遺伝属性:スジエビについて、熊本県から山形県までの13県から標本を採取し、ミトコンドリアDNA16SrRNA領域の配列情報を明らかにした。その結果、全体で6つのハプロタイプに分けられ、5つのハプロタイプはそれぞれ同地域または近隣地域の個体で構成されていたが、残る1つのハプロタイプは異なる地域の個体で構成されており、構成する個体数も多く、琵琶湖産個体も含まれていたことから、養殖を目的とした湖などへの意図的放流、琵琶湖産アユの放流に伴う非意図的放流により日本各地に拡散し定着している可能性が示唆された。また、Genebankに登録されている韓国産スジエビの配列を加えたところ、静岡で採集された個体がそのうちの1つと同配列であり、韓国産スジエビの日本国内への定着が示唆された。2)寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響:スジエビ類に対するエビノコバンの奇生生態の地域差を比較するため、東京都(利根川水系水路)、滋賀県(琵琶湖周辺河川)および島根県(出雲市ため池)で野外調査をおこなった。その結果、エビノコバンが宿主を離れて繁殖活動をおこなう時期について、東京都では5月であるが、滋賀県や島根県では6月とやや遅れていることから、水温の違いが本種の繁殖活動に影響を及ぼしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・日本各地からスジエビ標本を得ることができ、ミトコンドリアDNA16SrRNA領域の配列情報を解析し、琵琶湖産個体の拡散やを韓国産個体の侵入を明らかにできた。スジエビのGenebank登録データの登録数が増えれば、今後の解析の進展が期待できる。 ・寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響に関して室内実験を着手できなかったものの、東京都、滋賀県および島根県の3地点でエビノコバンがスジエビ類に及ぼす影響について比較できた。今後も調査を継続することによって、本種の生活史や宿主選択性などの生態特性解明の進展が期待できる。 、
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Strategy for Future Research Activity |
・スジエビ類および寄生種の遺伝属性:チュウゴクスジエビやエビノコバンの標本を日本各地から採取し、ミトコンドリアDNA16SrRNA領域の配列情報を解析する。 ・寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響:寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響に関して室内実験を実施する。また、スジエビ類に対するエビノコバンの奇生生態の季節変化を明らかにするため、利根川水系水路(東京)等で野外調査を継続する。 ・スジエビ類および寄生種の流通状況:日本各地の釣具店において、スジエビと付随するエビノコバンおよび国内に定着したチュウゴクスジエビの流通状況を調査する。
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Causes of Carryover |
(理由) 寄生種がスジエビ類に及ぼす生態的影響に関して室内実験を着手できなかったため。 (使用計画) 上記研究計画を遂行するための、消耗品費として使用する予定である。
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