2019 Fiscal Year Research-status Report
隠岐諸島に生育する氷河期遺存樹種の更新戦略と遺伝的多様性
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18K05727
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
久保 満佐子 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 准教授 (70535468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎尾 均 新潟大学, 佐渡自然共生科学センター, 教授 (20449325)
須貝 杏子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (20801848)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 隠岐諸島 / 氷河期遺存樹種 / ミズナラ / ヒメコマツ |
Outline of Annual Research Achievements |
日本海島嶼の隠岐諸島は大陸と日本列島の間に位置し,氷河期には本州本土の島根半島と陸続きになっていた。隠岐諸島の森林植生は,暖温帯林の中に冷温帯や亜高山帯に生育する種が混生しており,氷河期の遺存的な種が残存して独特な植生を形成している可能性がある。そこで本研究では,隠岐諸島に生育する樹種を明らかにするため,樹木リストを作成する。さらに氷河期遺存樹種であるカツラとヒメコマツ,ミズナラ,クロベの生態と遺伝的多様性を調べ,隠岐諸島のレフュジアとしての役割を明らかにすることを目的とする。 本年度は,隠岐諸島の植物相について整理した結果を公表し,さらに隠岐諸島と佐渡島の樹木リストの比較を行った。 氷河期遺存樹種4種については,本年度はミズナラとヒメコマツの詳細な分布と生態を調べた。ヒメコマツは隠岐諸島島後にのみ分布し,6つの大きな個体群が確認された。小径木は岩盤に,大径木は尾根斜面に分布していた。群集構造を見ると,アカマツとクロマツ,クロベと共に生育し,さらに暖温帯の代表樹種であるスダジイや冷温帯の代表樹種であるミズナラと生育していることが特色であった。ミズナラについては,隠岐諸島島後全域で確認され,海岸から山地帯まで分布していたが,ミズナラの群落は島の北側に偏ってあり,南側ではミズナラの群落は少なくコナラが多いことが確認された。冷温帯の樹種であるミズナラは,暖温帯の隠岐諸島道の中では北側から山地帯に多いことから,暖温帯でも生育可能な条件がこの地域にあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存資料の整理と現地調査によりまとめた隠岐諸島の植物目録を公表し,さらに,隠岐諸島と佐渡島の樹木組成の比較を行った。氷河期遺存樹種4樹種については,遺伝子解析用の資料採取を全て行い,ヒメコマツおよびミズナラについては分布の詳細を調べ,その傾向から氷河期遺存樹種が隠岐諸島の中でどのような分布の特性を持っているのかを明らかにした。ミズナラについてはGPS位置情報の記録から,島の中での分布について解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
隠岐諸島と佐渡島の樹木リストの比較から,隠岐諸島の樹木相の特徴を明らかにする。また,博物館に所蔵されていない樹種の採取を継続して行い,隠岐諸島の樹木全種の標本をそろえる。固定調査地でカツラの分布,雌雄,個体サイズを調べ,遺伝的多様性と生態との関係を明らかにする。ミズナラに関しては,隠岐諸島の島前での分布調査を行い,各生育地の気象条件との関係から,暖温帯域でミズナラが優占する条件を明らかにする。採取した試料から,遺伝子の解析を進める。
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Causes of Carryover |
遺伝子解析の資料を作成したが,解析については次年度に継続して行うため。
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Research Products
(1 results)