2019 Fiscal Year Annual Research Report
海水移行時の低水温と栄養状態に着目したサケ稚魚の減耗機構に関する実験的検証
Project/Area Number |
18K05801
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Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
宮腰 靖之 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部中央水産試験場, 部長 (70442639)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
虎尾 充 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 水産研究本部さけます・内水面水産試験場, 主査 (80442672)
清水 宗敬 北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (90431337)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サケ / 稚魚 / 成長率 / 栄養状態 / 遊泳力 / 初期減耗 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なる摂餌状態と水温条件が海水移行時のサケ稚魚の初期減耗に与える影響を調べるため,2019年,水温条件と給餌・絶食の条件を変えた以下の試験群を設定してサケ稚魚の飼育試験を行った。給餌率をそれぞれ0%(絶食),1%,および3%で5日間淡水飼育した後,それぞれの群を低水温区(4℃),中水温区(7℃),高水温区(10℃)の試験水槽に収容し,3日間の馴致期間を経て10日間の海水飼育を行った。 これらの試験群について,栄養状態の指標として筋肉中のトリグリセライド/リン脂質比(TG/PL比)と肝臓中のグリコーゲン(GC)含量を測定した。成長率の指標として血中のインスリン様成長因子-I(IGF-I)量を測定した。海水飼育後のTG/PL比はいずれの水温区でも淡水飼育時の給餌率が高い群で高く,肝臓中GC含量は低水温・絶食群で高かった。血中IGF-I量は淡水での絶食で低値となった。海水飼育10日後には,中水温と高水温試験区では淡水絶食群の血中IGF-I量が回復したが,低水温試験区では低いままであった。一方,1%摂餌群では,低水温による影響は認められなかった。これらの結果は,淡水中で餌を採れなかった稚魚が冷たい海に入ると,沿岸での餌量に関わらず成長が停滞することを示唆している。 遊泳力の指標として臨界遊泳速度(Ucrit)を測定した。海水飼育後には,低水温試験群の遊泳速度は高水温試験群より低かった。サケ稚魚の海水移行後の遊泳速度は水温に大きく影響を受け,低水温では遊泳速度が低下することが示された。また,淡水生活期の絶食が海水移行後の遊泳速度低下につながることもわかったが,水温が高い場合はその影響が軽減される可能性がある。 群れ行動の特性を解析したところ,水温は影響を与えなかったが,絶食によって個体間距離が広がる傾向が認められ,個体の栄養状態が群れの維持に悪影響を与える可能性も考えられる。
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Research Products
(3 results)