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2020 Fiscal Year Research-status Report

腎糸球体上皮細胞の突起形成におけるアクチン細胞骨格制御機構の解明

Research Project

Project/Area Number 18K06227
Research InstitutionKitasato University

Principal Investigator

斉藤 康二  北里大学, 理学部, 講師 (70556901)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 太田 安隆  北里大学, 理学部, 教授 (90192517)
Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywordsポドサイト / FilGAP / Rac / PAK / cAMP / Epac / Rap1 / PIP3
Outline of Annual Research Achievements

腎糸球体上皮細胞(ポドサイト)は、細胞骨格に支えられた突起構造が発達しており、その形成と維持が腎臓の濾過機能には必須である。アクチン細胞骨格の制御に重要な役割を果たすRho small GTPase であるRacの過度な活性化が突起形成を阻害することから、その活性の抑制が突起形成に重要であると考えられているが、その詳細な分子メカニズムは不明である。これまでに、ポドサイトにおいてRacの活性抑制に働く分子として、Rac特異的な不活化因子(GAP)であるFilGAPを同定し、FilGAPがその突起構造の形成と維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。昨年度はさらに、ポドサイトにおいてFilGAPが機能しないとRacの標的分子であるPAKが活性化し、突起形成が阻害されることを示唆する結果を得た。本年度は、突起形成においてFilGAPの機能がどのように制御されているのか、FilGAPの上流のシグナル経路の解析を中心に研究を進めた。実験にはこれまで同様、ラットポドサイト由来C7細胞株を用いた。C7細胞はフォルスコリン(FSK)で処理すると生体に近い突起構造を誘導できる実験系である。FSKは細胞内のcAMP濃度の上昇を引き起こす薬剤である。昨年度、FilGAPの機能制御に関わるいくつかの分子を解析した結果、細胞膜リン脂質であるPIP3がポドサイトの突起形成に関与していることが示唆された。PIP3はPHドメインを介してFilGAPと結合し、細胞膜への局在化を制御している。FilGAPの細胞膜への局在化はそのRacGAPとしての機能に重要である。本年度は、cAMPの標的分子の一つであるEpacが突起形成に関与していること、そのシグナル下流でPI3K/PIP3がFilGAPの機能を制御している可能性があることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

これまでに、RacによるPAKの活性化がポドサイトの突起形成を阻害すること、その活性抑制にFilGAPが関与していることを明らかにした。本年度は突起形成におけるFilGAPの機能制御メカニズムの解析を進めた。PIP3はFilGAPと結合して細胞膜への局在化を制御することでその機能に重要な役割を果たしている。昨年度、PIP3産生を促進するリン酸化酵素であるPI3Kの阻害剤(wortmannin)処理やPIP3の脱リン酸化酵素であるPTENを過剰発現すると突起形成が阻害されることを報告した。これは突起形成にPIP3が関与していることを示唆している。本年度、wortmannin処理による突起形成の阻害効果がFilGAPの過剰発現によって回復するかを調べた結果、回復しなかった。これは、突起形成においてPI3K/PIP3がFilGAPの機能を制御している可能性を示唆している。本研究は、細胞内のcAMP 濃度の上昇を引き起こすFSKによって突起形成が誘導されるC7細胞株を用いて実験を行なっている。cAMPの標的分子であるEpacはsmall GTPase Rap1の活性化因子で、Rap1はその下流でPI3K/PIP3を活性化することが知られている。したがって、ポドサイトの突起形成において、cAMPシグナル下流でFilGAPによるRacの不活化が起きているのではないかと考えた。そこでまず、Epacの阻害剤(ESI-09)で処理した結果、突起形成が阻害された。この阻害効果はFilGAPの過剰発現によって回復しなかった。おそらく、FilGAPの機能制御メカニズムとして、cAMP/Epac/PI3K/PIP3経路が存在しているのではないかと推察している。以上、研究はここまで順調に成果を上げており、ポドサイトの突起形成を制御する分子メカニズムの一端が明らかになりつつある。

Strategy for Future Research Activity

本研究課題では以下の4つを当初研究計画として挙げていた:① FilGAPのポドサイトの突起形成への関与 ② ROCKによるFilGAPのリン酸化の突起形成への関与 ③ 突起形成におけるRacシグナル下流の分子メカニズム ④ 突起形成におけるFilGAPの機能制御メカニズム。これまでに①②は終了し、本年度は④についていくつかの成果を挙げた。残りの研究期間では、③④に関してその分子メカニズムをさらに解析する予定である。まず③では、PAKが活性化するとなぜ突起形成が阻害されるのか、その下流の分子メカニズムを明らかにする。Vimentinから構成される中間系フィラメントはポドサイトの突起構造を支える重要な細胞骨格である。PAKによるvimentinのSer55のリン酸化はその脱重合を引き起こすことが知られている。C7細胞ではFSK処理によってSer55のリン酸化が顕著に減少したことから、PAKの活性化によるvimentinのリン酸化は突起構造の消失を引き起こすと考えられる。そこで、Ser55の擬似リン酸化型変異体(S55E)を作製し、vimentinのノックダウンもしくはノックアウト株に遺伝子導入して突起形成への影響を調べる。④についてはこれまでの結果から、PIP3が突起形成に重要であること、突起形成においてPI3K/PIP3がFilGAPの機能を制御していることが示唆された。しかし、突起形成におけるPIP3とFilGAPとの直接的な関連は明らかにしていない。そこで、PIP3と結合しないFilGAPの変異体(R39C)をFilGAPのノックダウンもしくはノックアウト株に遺伝子導入して突起形成への影響を調べる。さらに、突起形成においてcAMP/Epac/Rap1経路がFilGAPの機能制御に関与しているのか、これらのシグナル経路の活性化とFilGAPの機能との関連を調べる。

Causes of Carryover

[次年度使用が生じた理由] 新型コロナウイルス感染症拡大のため、本年度前半研究活動が制限されたこと、本研究活動以外のその他のエフォート(オンライン講義や実習の準備・実施等の教育活動)が増加したこと、以上2点の理由から、本年度予定していた研究計画の一部を実施することできず、研究費を次年度に繰り越した。
[使用計画] すべて、一般試薬や細胞培養用培地等の消耗品費として使用する。まず、研究計画③(突起形成におけるRacシグナル下流の分子メカニズム)を実施する。RacによるPAKの活性化がポドサイトの突起形成を阻害することが示唆された。さらにPAKによるvimentinのリン酸化がその脱重合を引き起こした結果、突起形成が阻害されたのではないかと考えた。次年度は、本年度計画していたvimentinに関する解析を進める予定である。さらに、研究計画④(突起形成におけるFilGAPの機能制御メカニズム)についても実施する。ポドサイトの突起形成においてFilGAPの機能がどのように制御されているのか、本年度、その解析を進めて一定の成果が得られている。次年度、さらに詳細な解析を行い、FilGAPの機能制御メカニズムの解明を目指す。

Research Products

(5 results)

All 2021 2020

All Journal Article (2 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Presentation (3 results)

  • [Journal Article] FilGAP, a GAP protein for Rac, regulates front‐rear polarity and tumor cell migration through the ECM2021

    • Author(s)
      Saito Koji, Mori Mamiko, Kambara Norito, Ohta Yasutaka
    • Journal Title

      The FASEB Journal

      Volume: 35 Pages: e21508

    • DOI

      10.1096/fj.202002155R

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] Involvement of Nlrp9a/b/c in mouse preimplantation development2020

    • Author(s)
      Kanzaki Satoko, Tamura Shiori, Ito Toshiaki, Wakabayashi Mizuki, Saito Koji, Kato Shigeki, Ohta Yasutaka, Sekita Yoichi, Kimura Tohru
    • Journal Title

      Reproduction

      Volume: 160 Pages: 181~191

    • DOI

      10.1530/REP-19-0516

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] RacGAP因子ARHGAP25はセプチン複合体と結合し、葉状仮足形成を制御する2020

    • Author(s)
      田村杜萌, 斉藤康二, 梅川恵美, 大槻繭子, 太田安隆
    • Organizer
      日本分子生物学会年会
  • [Presentation] 着床前および着床後の発生に関与する母性因子としてのNLRP92020

    • Author(s)
      田村史織, 神崎 理子, 伊藤 駿瑛, 若林 美月, 斉藤康二, 加藤 重城, 太田安隆, 関田洋一, 木村透
    • Organizer
      日本分子生物学会年会
  • [Presentation] Racシグナルの活性化は腎糸球体上皮細胞の突起形成を阻害する2020

    • Author(s)
      斉藤康二,水田さり,多田奏絵, 小田萌紀, 與川正治, 栗原秀剛,太田安隆
    • Organizer
      日本細胞生物学会大会

URL: 

Published: 2021-12-27  

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