2020 Fiscal Year Research-status Report
Regulatory mechanism of the differentiation of multipotent stem cells in the tailbud and spinal cord development in vertebrate embryos.
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18K06242
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
弥益 恭 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60230439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津田 佐知子 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (80736786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 多分化能幹細胞 / 尾芽 / 体軸伸長 / 神経管形成 / 神経発生 / Oct4型POU転写因子 / pou5f3 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度に続き、ゼブラフィッシュを材料として熱誘導性ドミナントネガティブpou5f3遺伝子(hsp-en-pou5f3)を用いた機能阻害実験を行い、pou5f3が多能性関連遺伝子及び中胚葉形成遺伝子を抑制する一方で神経発生遺伝子を活性化することを、複数の発生段階において、さらに多数の遺伝子マーカーを用いて確認した。また、pou5f3がBMP遺伝子を抑制すること、BMP阻害因子chordinの発現を活性化することを示唆した。pou5f3変異体の表現型解析の結果も以上の可能性を支持している。加えてpou5f3-ERT2融合タンパク質を利用したgain-of-function実験もpou5f3が尾芽形成遺伝子の発現を制御することを確認した。以上は、脊髄の伸長でのpou5f3の重要性を明らかにするものであり、脊髄の形成不全による疾患の理解にも貢献すると考える。 (3)各種分泌性シグナル(BMP、FGF、Wnt)が尾芽発生に関わることをシグナル阻害剤での処理実験で確認した。さらに、2色FISHにより、主要シグナル遺伝子のfgf8aとwnt3aが尾芽周辺で特異的に発現すること、bmp2bが尾芽の表層外胚葉で発現することを確認し、各種シグナルの供給細胞を絞り込んだ。 (3)pou5f3とsoxB1(sox3、sox19aなど)の相互作用が神経管の発生を推進すると予想されたことから、sox3とsox19a各々の変異体の解析を進め、これらの2重変異体において、尾芽伸長異常と神経発生遺伝子の発現低下を確認した。 (4)CRISPR/Cas9技術を利用してpou5f3遺伝子上流へのegfp遺伝子のノックインに成功し、発生中の神経管におけるpou5f3発現細胞の視覚化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)誘導性ドミナントネガティブ遺伝子を活用した機能阻害実験をさらに発展させることで、pou5f3が尾芽の発生と脊髄伸長において、多様な役割を持つこと、特に、この遺伝子が、多能性維持遺伝子の発現と中胚葉形成は抑制する一方で、尾芽未分化細胞の維持と神経発生の推進を行うことを確認した。また、pou5f3-ERT2融合タンパク質を利用したpou5f3のgain-of-function実験系を立ち上げた。これらの研究で得られた結果は、pou5f3の尾芽形成、とくに脊髄発生への関与を確実にしたものといえる。これまでに作製した変異体を活用し、pou5f3とsoxB1(sox3 sox19a)が尾芽形成と体軸伸長に関わることも確認しており、今後さらなる遺伝学的研究の基盤を確立したと評価できる。一方、尾部形成への関与が示された主要シグナル(FGF、Wnt、BMP)について、主要因子の遺伝子発現部位を決定しており、これにより尾芽領域各種シグナルによる制御が実際に可能であることを明らかにした。「 (2)その一方で、尾芽形成の電子顕微鏡での微細構造解析については明確な成果が得られていない。また、尾芽発生でのsox3の役割についての誘導性ドミナントネガティブsox3遺伝子を利用した検討が、コロナ禍による研究室閉鎖の影響で実現していない。 (3)pou5f3上流への蛍光遺伝子の導入を前年度までに行っており(Tg(pou5f3:egfp))これを使った発生過程におけるpou5f3発現細胞の挙動を検討する予定であったが、コロナ禍の中で世話が不十分になったため、作製直後だったこの系統が絶えてしまい、実現していない。また、Cre-LoxP系により尾芽形成遺伝子を発現する細胞の永久標識を行い、これらの細胞の後期発生での動態追跡(GIFM法)を行うことを予定していたが、この実験も課題に留まっている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)樹立済みのpou5f3変異体とsoxB1変異体について、電子顕微鏡での微細構造レベルでの形態的な表現型解析を行う。soxB1については、やはり作製済みの誘導性ドミナントネガティブsox3遺伝子を用いて尾芽発生での役割を検討する。さらに、sox2についてもCRISPR/Cas9法により新たに変異体を作製し、尾芽形成、体軸伸長への影響を検討する。これらの実験により、尾芽の形成と維持、脊髄発生と神経形成におけるpou5f3、soxB1を中心とした遺伝子相互作用、制御ネットワークの理解をめざす。 (2)egfp遺伝子のpou5f3上流へのノックインを再度行い、pou5f3細胞の蛍光標識系統(Tg(pou5f3:egfp))を改めて樹立した上、これを用いて発生過程におけるpou5f3発現細胞の挙動を共焦点レーザー顕微鏡などで追跡する。なお、尾芽細胞の脊髄細胞への分化とその後の神経細胞への成熟が、脊髄後端にあるpou5f3発現領域で進行すると考えており、その過程を知るため、脊髄後端領域にあるpou5f3発現細胞の体軸伸長における挙動を明らかにする。 (3)pou5f3、そして尾芽細胞維持に関わるtbxtaについて、上流へのCreERT2遺伝子のノックインを行う一方(pou5f3:creERT2、tbxta:CreERT2)、Cre-LoxP系によりtamoxifen依存的に蛍光タンパク質標識が可能な遺伝子導入魚を作製する(CAG-loxP-Stop-loxP:ZsGreen)。これらの遺伝子導入魚を用い、pou5f3やtbxtaを発現する細胞の永久標識、そして発生後期、そして成体におけるこれらの細胞の動態追跡を行う(GIFM法)。
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Causes of Carryover |
2020年度、新型コロナウイル蔓延に対応した緊急事態宣言の結果として、4月から7月にかけて研究室が事実上閉鎖になったために研究の遂行が大幅に遅れ、使用額が予定より大幅に減額となった。また、2020年度に参加予定だった学会(動物学会、分子生物学会)がコロナ禍のためにオンライン開催になっており、旅費が発生しなかった。2021年度は、残額分を活用して本研究の未完成部分を完成させた上、論文発表を行う予定である。
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Research Products
(8 results)