2019 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類卵巣における濾胞選択機構-インヒビンは濾胞閉鎖を誘導するか?
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18K06306
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荻原 克益 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (00422006)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 濾胞選択 / エストラジオール / アポトーシス / 閉鎖濾胞 / アロマターゼ / 卵巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス卵巣内には、成長を開始する前の濾胞(原始濾胞)が多数存在する。あるホルモンの刺激を受けると、いくつかの原始濾胞が成長を開始するが、その数はマウスの場合、数十個から百個程度と考えられている。成長を開始した濾胞は、途中でアポトーシスにより死滅し、最終的に10-20個程度の卵が排卵される。このように、アポトーシスにより死滅する濾胞とそのまま生き残り排卵まで行きつく濾胞が選別される過程を濾胞選択と呼ぶ。本研究では、マウスの濾胞選択の分子機構に焦点を当て、その解明を目指して研究を行っている。 通常、PMSG/hCG等による過排卵誘導法では20-30個程度の卵が排卵されるが、本研究で用いる薬剤では、100個程度の卵が排卵される。この排卵数は成長を開始した原始濾胞数とほぼ一致することから、この薬剤はアポトーシスを阻害していることが考えられる。この薬剤を用いた研究から、エストラジオールとアロマターゼ(エストラジオール生合成のkey enzyme)が重要であることを昨年度報告した。本年度は、アロマターゼについて、その発現量や酵素活性の変動について詳しく調べた。その結果、薬剤処理とPMSG処理間で、その発現量に有意な増減は見られなかったが、アロマターゼ活性は薬剤処理グループで有意に増加していることが明らかとなった。さらに、PMSG注射後、ある特定の時間にエストラジオールを注射することで、PMSG/hCGによる排卵数と比較して、排卵数が有意に増加することを突き止めた。これらの結果は、この薬剤がどのようにアポトーシスを抑制しているのかを解明する重要なヒントとなり、濾胞選択機構解明に向けた大きな一歩となる。今後は、この薬剤処理により、なぜアロマターゼ活性が増加するのか、その分子機構(作用機構)について研究を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初は、研究実施計画に記した計画に沿って研究を実施していたが、昨年度、当初予期していなかった興味深い結果を得たため、昨年度はその結果に基づく研究を重点的に実施した。本年度も昨年度行っていた研究を継続したため、当年実施予定の計画の一部は未実施となった。しかしながら、重点的に行った研究が順調に進展しているので、「おおむね順調に進展している」という判断となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度重点的に行った研究を、来年度も優先研究課題として実施していく予定である。これに伴い、当初予定していた研究計画の一部は実施が難しくなる可能性が高く、研究計画の変更が必要と考えられる。当初予定していた研究計画通りの実施は困難なことから、マウス個体を用いた実験課題については、来年度は実施せず、分子レベルでの解析(優先研究課題)を優先的に実施していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究計画を変更したため、当該助成金の使用計画も一部変更した。その結果、一部次年度への繰越しが発生した。次年度は、ホルモン測定を多く実施する予定であるため、ホルモン測定用kitの購入費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)