2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06386
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
橋本 佳明 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (50254454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市岡 孝朗 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40252283)
遠藤 知二 神戸女学院大学, 人間科学部, 教授 (60289030)
兵藤 不二夫 岡山大学, 異分野融合先端研究コア, 准教授 (70435535)
山崎 健史 首都大学東京, 理学研究科, 特任助教 (90746786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 擬態 / 生物多様性創出 / 熱帯雨林 / アリ類 / ハエトリグモ類 / 種間関係 / 進化 / 行動生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯で特に高い種多様性を有するハエトリグモ科アリグモ属では,各種が特定のアリ種に外見をそっくりに似せる特異なアリ擬態が見られる.我々は,この特異なアリ擬態が,擬態モデルのアリ種からの攻撃を回避し,そのなわばり内を生息や採餌場所として利用するための擬態ではないかと考えた.本研究の目的は,この仮説を検証し,アリグモがアリのなわばり内を生息場所とすることが,アリグモの生殖隔離機構として種分化を促進している可能性を検証する足がかりとすることである.本年度は,まず,ボルネオ島ランビルで,アリ類とアリグモ類で,擬態形態のマッチングの組み合わせの違いよる両者の攻撃行動や回避行動の行動生態学解析を行った.実験材料として,ツムギアリとツムギアリ擬態アリグモやトゲアリ擬態アリグモ,さらに,非擬態のハエトリグモを用い,59例の行動観察実験を動画に記録できた.その詳細な解析は,現在進行中であるが,1)アリグモが擬態モデルとしているアリ種とそうでないアリ種を認識して,回避行動を明確に変えていること,2)一方,アリ種でも,自分に擬態しているアリグモ種には積極的な攻撃行動を見せず,別のアリ種に擬態しているアリグモや非擬態のハエトリグモには,すぐに攻撃を加えることが確認できた.これらの結果は,これまで外敵から身を守るための適応現象と考えられてきた擬態に,世界で初めて,擬態モデルからの攻撃回避の効果と意味があることを実際のデータで示したものであり,我々の仮説が正しいことを支持するものである. さらに,1)アリグモが擬態モデルのアリが作るテリトリー内を採餌場所として利用しているのかを検証するための安定同位体分析用サンプルと,2)アリグモの擬態モデル選択が,その種分化を促進しているのかを,種分岐パターンと擬態モデル選択の合致よって検証するための系統解析用DNAサンプルの収集も実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで,同一研究チームで,アリとアリグモ調査の実績を10年間積み上げてきた.このため,研究に必要な材料収集の方法や分析技術は確立されている.さらに,調査地でのアリ類,アリグモ類,非擬態ハエトリグモ類などの分類整理も,同時に進めてきたことにより,研究対象の種名同定なども可能になっている.これらの実績が既にあるため,本研究計画の進捗状況は概ね順調である.例えば,擬態モデル・アリとアリグモ間の攻撃と回避行動の解析は,本研究計画で,初めて取り組む課題である.そのために今回,新たに行動観察装置を試案したが,それを使って解析使用できるデータを収集することができた.さらに,そのデータの解析手法についても,対象二点間の距離と頭の向きを,記録動画から自動で計測分析するプログラムの開発も進めている.一方,アリグモが擬態モデル・アリのテリトリー内で,主に,餌資源を確保しているのかについては,従来の安定同位体分析だけでは難しい.このため,実験的な操作で,そのことを検証できる手法がないかを検討中で,それが課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度でも,調査地としているボルネオ島ランビル・ヒル公園で調査を続行できることになっている.このため,国際紛争など突発的な事態が生じない限り,特に,研究計画の推進方策に変更はない.また,そうした事態が生じた場合には,調査地をタイ国などに変更することで,研究を推進できる.
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Causes of Carryover |
航空券の燃料サージなどの変動による差額.次年度の調査旅費に合わせて使用する
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