2018 Fiscal Year Research-status Report
新規ビシクロ骨格構築法を基盤とした生物活性アルカロイドの合成と構造活性相関研究
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18K06548
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀧川 紘 京都大学, 薬学研究科, 講師 (70550755)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アルカロイド / 天然物合成 / 橋頭位イオン / ベンザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1. ケイ素テザーを活用したベンザインとシクロヘキサジエンとの[4+2]付加環化反応、ならびに2. 橋頭位カチオンを鍵とするベンゾビシクロ[3.2.2]ノナジエン骨格構築法の開発、2点について検討した。 1. まず、ベンザイン前駆体から発生させたベンザインとジエンとの分子間[4+2]付加環化反応を試みたところ、期待に反し、目的とする付加環化体は全く得られなかった。種々検討した結果、この問題は、分子内反応にすることによって解決できることが分かった。すなわち、まず、2,6-ジブロモフェノールから3段階の工程を経てベンザイン発生部位を有するシリルクロリドを合成した。このものとジエニルアルコールとを反応させ、付加環化前駆体を合成した。このものに対してマグネシウムアート錯体を作用させたところ、系中で発生したベンザインとジエン部位との間で分子内[4+2]付加環化反応が進行し、対応する環化付加体が高収率で得られた。この手法は、他の親ベンザイン体に対しても有効であり、フラン、ピロール、鎖状ジエン、アントラセン、ナフタレンなど、幅広い基質に適用できることが分かった。 2.得られた付加環化体を用いてベンゾビシクロ[3.2.2]ノナジエン骨格の構築を試みた。すなわち、まず、2段階の工程により対応するトリフラートを得た後、このものに対してヨウ化マグネシウムを作用させたところ、アルキル基選択的な転位反応が進行するとともに、橋頭位がヨウ素化され、対応するヨージドが収率良く得られた。このとき、ビニル、およびアリール転位体は全く生成しなかった。この反応は、環拡大反応に伴う橋頭位のヨウ素化に成功した初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
付加環化反応と環拡大反応を基盤としたビシクロ骨格構築法の開発において有望な知見が得られた。すなわち、除去可能なテザー基を活用したベンザインとシクロヘキサジエンとの分子内付加環化反応によって、ベンゾビシクロ[2.2.2]ノナジエン骨格の構築に成功した。ポイントは、クロロシリル基を有するベンザイン前駆体を新たに開発したことにあり、これをベンザインのプラットフォームとして用いることによって、様々な親ジエン体との反応を簡便に分子内反応に展開できるようになった。また、環拡大反応においては、環拡大に伴うヨウ素化に初めて成功し、橋頭位にヨード基を有するベンゾビシクロ[3.2.2]ノナジエン骨格を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
標的化合物の全合成に向け、橋頭位ヨージドから発生させたリチオ体をアセトアルデヒドに付加させた後、3工程の変換により標的化合物の部分骨格に相当するモデル化合物の合成を目指す。つづいて、得られた知見をもとに、全合成に向けて実際の基質を活用した検討を開始する。
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Research Products
(15 results)