2019 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism for organelle trafficking in which proton-pumping ATPase is involved
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18K06661
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
中西 真弓 岩手医科大学, 薬学部, 教授 (20270506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロトンポンプ / 破骨細胞 / 分泌リソソーム / Rab7 / V-ATPase / 骨吸収 / 大理石病 / オルガネラ輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
破骨細胞における分泌リソソームの分子機構の解明を進めている。これまでに、分泌リソソーム膜に局在するV(液胞型)-ATPaseのa3イソフォームが、GDP型(不活性型)Rab7を分泌リソソームへリクルートすること、Rab7のGEF(GTP/GDP交換因子)として知られるMon1/Ccz1と結合できること、GTP型(活性型)Rab7が安定してリソソームに局在するにはV-ATPaseによる酸性化が必要であることを示唆した。 a3とMon1/Ccz1Rab7の結合状態をより詳しく知るため、Mon1/Ccz1とa3の結合領域を検討した。Mon1/Ccz1は主にLONGINドメインで、a3はリソソーム膜から細胞質側に突出しているN末端側半分で結合していることがわかった。今後は結晶構造解析を目指し、さらに結合領域を限定する。 ヒトにおいて大理石病を引き起こすa3の変異は90種類以上報告されているが、その発症機構は解明されていない。そこで、a3欠損破骨細胞に大理石病患者由来の変異を導入したa3を発現させ、その発現量、Rab7との結合、Rab7の活性化、分泌リソソームの細胞内輸送、骨吸収活性を検討した。変異としては、Mon1/Ccz1と結合するN末端ドメインにおいて見出された4種の変異(2種は1アミノ酸置換変異、2種は10アミノ酸程度の欠失変異)に注目した。欠失変異体は、破骨細胞で発現しないことが分かった。一方、置換変異体は、調べた限りにおいて野生型と違いがなかった。大理石病を発症するには、第2の変異が必要であると考えられる。実際、この変異を持つ患者の対立アレルには異なる変異が入っていることが報告されている。 こうした解析により、V-ATPaseが関与する分泌リソソームの機構や、骨代謝異常症の発症機構の解明に近づいている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題に取組み始めて2年が経過した。これまでに、V-ATPaseが関与する分泌リソソームの細胞内輸送機構について、関与する小胞輸送因子を同定し、それら因子とa3イソフォームの関わりを解明しつつある。また、分泌リソソームにおける酸性環境の関与や、大理石病患者由来のa3変異が骨吸収などに及ぼす影響について明らかにした。 本研究課題は、分泌リソソームだけでなく、オルガネラ輸送におけるV-ATPaseの普遍的な役割を解明することも目的の1つとしている。そのために必要な実験系として、インスリン分泌におけるa2イソフォームの役割を解析するための系を確立し、a2をノックダウンした。さらに、a2と結合する小胞輸送因子の同定も進めている。 以上の結果は、Exp. Cell Res.や「生化学」(日本生化学会の学会誌)の学術論文あるいは総説として、また、生化学会や薬学会および国際学会(FAOBMB Conference in Kuala Lumpur)で報告した。分泌リソソームの分子機構を解明しつつ、研究の次の段階の準備も進んでいることから、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分泌リソソームの分子機構に関して、Rab7を活性化する因子の解析を進める。Mon1/Ccz1の他に、破骨細胞への分化において発現が上昇するタンパク質をプロテオーム解析し、候補となる因子を網羅的に同定する予定である。また、分泌リソソームが移動する過程におけるV-ATPaseの活性状態をリアルタイムで観察するための準備が近々整う予定なので、実際の観察に挑戦する。さらに、a3欠損破骨細胞に、a1やa2を発現させ骨吸収活性などを測定することで、イソフォーム間の互換性を検討し、イソフォームの多様性の生物学的意義の解明を目指す。 一方、a2イソフォームにも注目し、インスリン分泌におけるa2の関与を検討する。また、がん細胞の転移における分泌リソソームやa3の役割を解析する。 以上の研究により、オルガネラ輸送におけるV-ATPaseの役割の統合的な理解を目指す。
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Causes of Carryover |
分泌リソソームに関与する因子を網羅的に同定するため、プロテーム解析を業者に委託する予定であったが、共同研究として理化学研究所と実施することとなり、次年度使用額が生じた。一方で、研究が順調に進んでいるため、次年度は予想以上にマウスの維持費、試薬(破骨細胞への分化誘導試薬や、分泌されたインスリン量を測定するELISAキットなど)や各種消耗品の購入費用がかさむと考えている。また、研究を効果的に進めるには、研究補助員の協力も欠かせない。次年度使用額は、翌年度分と合わせて、これらの費用に充てる予定である。
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[Journal Article] Fragment-based discovery of the first nonpeptidyl inhibitor of an S46 family peptidase.2019
Author(s)
Sakamoto Y, Suzuki Y, Nakamura A, Watanabe Y, Sekiya M, Roppongi S, Kushibiki C, Iizuka I, Tani O, Sakashita H, Inaka K, Tanaka H, Yamada M, Ohta K, Honma N, Shida Y, Ogasawara W, Nakanishi-Matsui M, Nonaka T, Gouda H, Tanaka N.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 19
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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