2020 Fiscal Year Research-status Report
心臓の機能と疾患における亜鉛シグナルの役割解明: 新しい治療戦略の開発を目指して
Project/Area Number |
18K06711
|
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
原 貴史 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (90546722)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 亜鉛シグナル / 亜鉛トランスポーター / 心臓 / 心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛トランスポーターは、生体内の亜鉛恒常性を制御する膜輸送体タンパク質であり、これまでに免疫応答や発生への関与など様々な役割が知られている。近年では、がんや代謝疾患をはじめとする種々の疾患の分子メカニズムに関連することが明らかとさつつある。亜鉛トランスポーターによって輸送された亜鉛は、 シグナル因子として細胞内で標的分子に作用し、様々な生理応答を制御する亜鉛シグナルとして機能することが知られている。しかし現在までに亜鉛シグナルと循環器についての報告はほとんどない。そこで本申請課題は、心循環器の恒常性維持における亜鉛シグナルの役割と病態への関与を解明し、新規治療戦略への貢献を目指すことを目的としている。 令和2年度は、1) Zip13-KOマウスのin vivo解析を含めたZIP13の心機能における役割解明と、2) 亜鉛トランスポーターの特異的化合物探索を中心に検討を進めた。得られた結果として、1) ドキソルビシン投与による心負荷病態モデルの心筋組織では、複数の心不全に関連するマーカー遺伝子の発現に変動が認められた。したがって、ZIP13が心機能に何らかの影響を与えているものと考えられた。2)亜鉛トランスポーターZIP14をモデル分子として、ZIP14薬剤誘導性発現細胞株を用いて、細胞増殖および細胞内活性酸素の変動を指標としたアッセイ系の確立を試行した。今後は、現在構築中のZIP13誘導発現細胞を用いて本実験系でZIP13の機能を制御する特異的化合物の探索を実施する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、1) Zip13-KOマウスのin vivo解析を含めたZIP13の心機能における役割解明と、2) 亜鉛トランスポーターの特異的化合物探索を中心に検討を進めた。 具体的には、1) ドキソルビシン投与による心負荷病態モデルを構築し、心筋組織における遺伝子発現の変動を解析した。野生型およびZip13-KOマウスのいずれにおいても、心筋の繊維化マーカーの有意な発現上昇が認められたことから、ドキソルビシン投与によって、心負荷モデルが確立できているものと考えられた。また、複数の炎症性サイトカインや、心不全マーカー遺伝子の発現についても評価を行い、ドキソルビシン 投与後のZip13-KOマウスにおいて、有意に発現変動する遺伝子が確認された。本結果から、ZIP13-KOマウスに心負荷病態モデルを適用することで、in vivo心機能評価において、何らかの影響が現れる可能性が考えられた。 2) 化合物探索については、細胞膜に発現するZIP14をモデル分子として、薬剤誘導性発現細胞株を構築し、細胞内亜鉛量の変動および細胞増殖を指標とした化合物スクリーニング系の構築を行っている。本年度は、細胞増殖に加えて、細胞内活性酸素を評価する実験系の構築を行い、ZIP14の発現上昇により活性酸素が時間依存的に上昇することが確認された。これまでに、ZIP13の発現低下によって細胞増殖が促進が認められること、また細胞内亜鉛量の変化と活性酸素の産生には関連があることが知られていることから、本実験系はZIP13の機能を制御する特異的化合物の評価系として有用であると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、1) Zip13-KOマウスのin vivo解析によるZIP13の心機能解析と、2)ZIP13特異的化合物の探索を実施する予定である。 具体的には、1) in vivo心機能解析をドキソルビシン投与による心負荷病態モデルを用いて、心電図などのin vivoにおける心機能解析を実施する。特に、野生型とZip13-KOマウスの心機能について、心負荷前後で心機能の変化を評価する。本結果で、心機能に対してZip13-KOマウス特異的な影響が認められた場合は、本年度の心筋組織の遺伝子発現変動の結果と合わせて、ZIP13の心機能への役割を分子レベルで包括的に理解することを目指す。 2) 本年度に、細胞増殖と細胞内活性酸素の評価系確立を試行した。ZIP13の遺伝子欠損により細胞増殖が促進することが知られていること、また細胞内亜鉛量の変動が活性酸素の産生と関連することから、本実験系がZIP13発現細胞におけるZIP13の機能評価系としても利用可能であると考えられる。現在実施中のZIP13発現細胞株の構築が完了次第、本実験系を化合物スクリーニングに適用する予定である。
|
Causes of Carryover |
令和2年度に実施予定であった動物実験および分子生物学的実験が、コロナ禍の影響で十分に進めることができなかったため、次年度使用額が生じている。
|
Research Products
(1 results)