2019 Fiscal Year Research-status Report
結核菌感染肺における「3型免疫応答」の多元的防御機構の解明
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18K07117
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
高江洲 義一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (60403995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | IL-17 / IL-23 / IL-1β / 3型免疫応答 / 結核 / 肺 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌感染における免疫応答では、IFN-γ産生を主体とするTh1細胞が最も重要な役割を担っていることが知られている一方で、炎症性サイトカインであるinterleukin(IL)-17Aが結核菌感染防御においても重要である。近年、我々は結核菌感染組織由来のTcR γδ T細胞が抗原特異的な刺激においてIL-17A産生増強することを見出している。しかしながら、その産生増強メカニズムは未だ不明瞭な点が多い。本研究では、結核菌感染肺由来T細胞がどのような機序によりIL-17Aを産生誘導するのか検討した。 Mycobacterium tuberculosis variant BCG (BCG)感染肺においてIL-17A産生T細胞が認められ、結核菌精製抗原(PPD)との共培養によりIL-17A産生の顕著な増強がみられた。事前研究で肺リンパ球と抗原提示細胞(APC)の非接触型共培養の条件下においても、PPD刺激によりIL-17Aの産生増強が認められていた。これに関与する培養上清中の液性因子を調べるためにIL-1βおよびIL-23を抗体で中和したところ、IL-17A産生は著しく減少した。また、このIL-17A産生誘導にはIL-23は必須ではないことがIL-23p19遺伝子欠損マウスを用いた解析から示唆された。このことから、BCG感染においてT細胞がPPDに反応してIL-17Aを産生するのは、IL-1βが必須であることが示唆された。一方で、抗原提示細胞を除いた肺リンパ球に直接PPDを加えた培養系においてもIL-17A産生の増強が認められ、肺リンパ球の抗原レセプターまたはパターン認識受容体(PRR)からの直接的なシグナル伝達がIL-17A産生を誘導する可能性も認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は本研究において「3型免疫応答」に関与するIL-17A、IL-17FおよびIL-22各々の機能性を肉芽腫形成ならびにその成熟を指標に解析を行う予定であった。すべての研究計画において利用するIL-17サイトカインファミリー欠損マウス、特にIL-17FおよびIL-17A/F 遺伝子欠損マウスを自家繁殖していたが、交配に用いる親マウスの日和見感染のみならず、新生仔マウスが下痢症を引き起こし、安定した供給が出来なくなった。マイコバクテリア感染において、IL-17Aは主にTcRγδ+T細胞より、IL-17Fは肺胞上皮細胞から強く産生されることを見出しているため、IL-17AとIL-17Fの機能分担がその局在性により規定されると仮定し、IL-17産生細胞亜集団欠損・混合骨髄移植キメラマウスの作製を試み、この混合骨髄移植キメラマウスを用いた結核菌に対する免疫応答能を検証する予定であった。しかし、前途とした理由からIL-17遺伝子欠損マウスが利用できない状態であり、当初計画していた研究の予定がやや遅延している。現在、飼育環境を改善し、実験に必要な遺伝子欠損マウスを揃えている。
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Strategy for Future Research Activity |
結核菌は結核菌排除に最も重要なIFN-γ産生能を有するTh1細胞や細胞傷害性T細胞を主体とする1型免疫応答の誘導を何らかの機序で遅延させる。この感染後の1型免疫応答の遅延現象はBCGを接種しても回避できないことから、結核を制圧するためには、1型免疫増強に加えて、新たな発想に基づいたワクチンを開発する必要がある。3型免疫応答は、自然免疫から獲得免疫まで広範囲に渡り機能を発揮する。これまで申請者は、結核ワクチンには1型免疫応答に加え、3型免疫応答の誘導が必要であるという有用かつ独自性の高い仮説を提唱してきた。その仮説を実証するために、結核防御に必要な1型ならびに3型免疫応答を共に増強しうるシステムを構築する。 今後は遅延している結核菌感染肺における肉芽腫形成とTh1型免疫応答に関与するIL-17産生細胞の移入実験を進めると共に、3型免疫応答を増強しうる結核菌由来分泌蛋白(zinc metalloprotease-1, Zmp1)の結核感染防御における役割を検討する。具体的には、ΔZmp1-BCGおよびその相補株のマクロファージの活性抑制化機構の解析ならびにマウス生体内でのΔZmp1-BCGの3型免疫応答増強ならびに1型免疫応答への影響の検討を行う。結核菌が細胞内で分泌するZmp1が炎症性サイトカインIL-1βの産生を低下させることでマクロファージの活性化を抑制することが示唆されていることから、recombineering法によりΔZmp1-BCGとその相補株を作製する。この欠損株および相補株をマクロファージに感染させ、発現誘導される分子と活性化するシグナル伝達経路を比較検討することにより、感染細胞でZmp1が抑制するシグナル伝達経路と機能を確定する。さらに、ΔZmp1-BCGあるいはその相補株をマウスの肺に感染させ、そこに誘導される免疫担当細胞活性化と病態形成を解析する。
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Causes of Carryover |
本研究において最も重要な動物の安定した供給が出来なかったため、動物実験に掛かる費用が当該年度に使用できなかった。しかしながら、本研究目標に向けた研究を遂行するにあたり動物実験が非常に重要である故、次年度に行う予定である。
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Research Products
(14 results)