2019 Fiscal Year Research-status Report
培養細胞を用いた世界初のプリオン病モデル構築と異常型プリオン産生メカニズムの解明
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18K07499
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
原 英之 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 助教 (40469953)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プリオン / 構造変換 / 神経変性 / ウイルス感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
プリオン病は、正常型プリオン蛋白質が感染性を有するプロテアーゼK(以下、PK)抵抗性の異常型プリオン蛋白質へと構造変換し発症するが、その分子機構は不明である。研究代表者は、神経細胞にA型インフルエンザウイルス(以下、IAV)を感染させると、正常型プリオン蛋白質が異常型プリオン蛋白質と同じPK抵抗性の構造へと変換することを発見した。そこで本研究では、IAV等のウイルス感染がプリオン病発症のトリガー因子となりえるのかを明らかにする。本年度は以下の通りに研究をすすめた。 昨年度、IAV感染により産生したPK抵抗性のプリオン蛋白質を接種したマウスは、異常型プリオン蛋白質を蓄積しプリオン病を発症した。よって本年度は、この異常型プリオン蛋白質の特徴を、以下の病理学的・生化学的解析を用いて、2種類の異なる性質のプリオン株(RML、22L)と比較した。病理学的解析(採材した脳の各部位をHE染色、抗プリオン蛋白質抗体により染色し、プリオン病の特異的病態である、異常型プリオン蛋白質の蓄積や空胞形成、または神経炎症の度合いを調べる)生化学的解析(採材した脳から作製した脳乳剤をPKで消化し、PK抵抗性のプリオン蛋白質の産生量をウェスタンブロット法により定量する)その結果、この異常型プリオン蛋白質は、グアニジン塩酸塩に対する感受性、潜伏期間、および異常型プリオン蛋白質の脳内での蓄積部位までRML、22L株とは異なっていた。以上の結果から、正常型プリオン蛋白質は、IAV感染によって、新規なタイプの異常型プリオン蛋白質へと構造変換することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
正常型プリオン蛋白質は、IAV感染によって、新規なタイプの異常型プリオン蛋白質へと構造変換することを明らかにできた。しかしながら、IAVをマウスに感染することで、異常型プリオン蛋白質を産生することには成功していない。よって、マウス個体ではなく、マウス脳スライス培養法を用いて異常型プリオン蛋白質の産生実験を計画している。また、IAV感染によって、正常型プリオン蛋白質が異常型プリオン蛋白質へと構造変換する分子機構については、この変換機構において重要な役割を果たしていると考えられる因子を複数個同定済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス脳スライス培養法を用いて、マウス脳スライスにIAVを感染させる。その結果、マウス脳スライスにおいてもPK抵抗性のプリオン蛋白質が得られたら、このプリオン蛋白質を再度マウスに接種する。この結果、接種実験を行ったこのマウス脳内でもPK抵抗性のプリオン蛋白質が確認でき、プリオン病を発症すれば、マウスでもIAV感染により異常型プリオンを産生できたことになり、IAV感染がプリオン病のトリガー因子となりえることを証明できたことになる。 また、IAV感染によって、正常型プリオン蛋白質が異常型プリオン蛋白質へと構造変換する分子機構については、この変換機構において重要な役割を果たしていると考えられる因子を複数個同定している。これらの因子がIAV感染において、プリオン蛋白質にどのように作用するのかを明らかにし、プリオン病発症のモデルを構築する。
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Causes of Carryover |
IAVをマウスに感染することで、異常型プリオン蛋白質を産生することには成功していない。よって、その後の実験に用いる予定の試薬等を購入することができなかった。そのために発生した繰越金は、マウス脳スライス培養法を用いた実験にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)