2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K08011
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
細野 邦広 横浜市立大学, 附属病院, 講師 (50537339)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / 化学予防 / メトホルミン |
Outline of Annual Research Achievements |
膵発がんモデルマウスを用いて、メトホルミンが発がんに与える影響を解析した。我々は過去数年間にわたり上記のような膵発がんモデルマウスの確立のために努力を行ってきて最近ようやく確立することができた。このモデルでは、ヒトの膵発がん前駆病変であるPanIN(pancreatic intraepithelial neoplasia)が自然発症し、PanIN 1からPanIN 3へと経時的に悪性度が増し、浸潤がんを発症する。このモデルを用いて、メトホルミン投与による膵発がん抑制効果を検証した。 まず、PanINの進行に与える影響を解析するため、定量システムを確立した。膵臓内に出現したPanINは病理組織でしか確認できないため、定量は膵臓切片のHE染色で行った。この際、検体間の誤差を最小限にするため、標本の作製時に十二指腸乳頭部と脾門部を結ぶ直線で膵臓を分割し、固定する。そして、この割面でパラフィン包埋切片を作成し、HE染色後にPanINの数を測定する。さらに分子メカニズムを解明するため、メトホルミン投与による膵正常組織における遺伝子発現解析やタンパク解析を行った。遺伝子解析としては、リアルタイムPCR法を用いてmTOR下流のcyclin D1, c-mycなどの解析を行った。蛋白解析はウエスタンブロット法を用いて、細胞増殖に必要なAMPK, mTOR, S6K, S6Pなどの解析を行った。PanIN病変においても同様に遺伝子解析や蛋白解析のほか、免疫染色法などによりKi67などの腫瘍組織における増殖細胞を検出するマーカーを用いて、メトホルミンの腫瘍への作用を明らかにし、新しい分子標的の同定を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らの教室では、「in vitro膵管発がんモデル」を構築することに成功している。LSL-KrasG12Dマウスの膵管上皮において3次元培養細胞(オルガノイド)にレンチウイルスでCre-recombinase遺伝子を導入し、体細胞変異を模写した条件でKras活性型変異アレルの発現を誘導したところ、ヌードマウス皮下に腺管をわずかに含む小さな腫瘤を形成した。さらにp16、p53、Smad4などのがん抑制遺伝子に対するshRNAを追加導入するとより悪性度の高い組織になることが確認された。この実験モデルを用いて、膵管オルガノイドにメトホルミンを投与し細胞増殖能などへの影響を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の臨床パイロット試験では、メトホルミン投与により膵正常組織と膵がん組織において、それぞれどのような変化をもたらすかを検証することにある。対象は、研究代表者が所属する附属病院においてCT、腹部超音波検査などの画像検査で膵がんが疑われる患者とする。当院は神奈川県下でも膵がんの集学的治療に特化しており、年間80~100例ほどの新規患者を予定としている。診断確定のため、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)により膵病変の組織を病理検体として採取するが、FNA検査前にメトホルミン群とプラセボ群に分け、一定期間投与する。FNA検査時に、膵腫瘍組織と膵正常組織をそれぞれ採取し、細胞増殖能の変化やアポトーシス解析に加えて、AMPK/mTOR経路の発現変化などを解析する。動物実験で明らかになった分子標的がメトホルミン投与により、正常上皮細胞もしくは腫瘍細胞においてそれぞれどのように活性が変化しているか検証することが目的である。本検討により、メトホルミンの化学予防効果の作用機序を明らかにしたい。
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