2021 Fiscal Year Research-status Report
慢性心不全における赤血球半減期短縮の機序に関する研究
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18K08055
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
辻野 健 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90283887)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 由朗 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049)
増山 理 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70273670) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心腎貧血症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性心不全患者において貧血の合併は予後不良の因子であるが、発症機序は多因子であり、十分解明されたとはいえない。我々は慢性心不全と貧血を合併する病態モデルであるDahl食塩感受性高血圧(DS)ラットにおいて、貧血の主要な原因が赤血球の血中半減期の短縮であることを明らかにし、論文発表を行った(Sci Rep. 2020 Dec 16;10(1):22023.)。そこで本研究の目標は、赤血球半減期の短縮の原因を、赤血球側の要因と赤血球を破壊する側の要因の両面から検討することである。我々は以前に、赤血球側の要因として、eryptosis(赤血球のapoptosis様プログラム細胞死)の関与を明らかにした。さらにその誘引として、脂質過酸化が存在することを示した。脂質過酸化が病態悪化に関連していることに注目し、今年度はDSラットにおいて、抗酸化経路を活性化するNuclear factor (erythroid derived-2)-like 2(Nrf2)の活性化薬であるフマル酸ジメチル(DMF)の予後に対する効果を検証した。その結果、食塩負荷したDSラットにDMFを投与したところ、統計学的に有意に死亡率を減少させた。また、DMFには腎障害を軽減する効果があることも組織学的検討により明らかにした。すなわちPAS染色では尿細管障害が食塩負荷では増加するがDMF投与によって減少すること、Masson-Trichrome染色では、腎臓の線維化が食塩負荷では増加するがDMF投与によって減少すること、TGF-β mRNA発現が食塩負荷では増加するがDMF投与により減少することを示すことができた。以上のことから、DMFが腎障害を軽減させ、生存率を改善していることが証明できた。さらに漢方薬十全大補湯が腎不全モデルの腎障害を改善することも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けつつも、学生の実験参加も可能となり、順調に研究は進んでいる。今年度はDSラットにおいて、抗酸化経路を活性化するNuclear factor (erythroid derived-2)-like 2(Nrf2)の活性化薬であるフマル酸ジメチル(DMF)の予後に対する効果を検証し、統計学的に有意な死亡率の減少を確認することができた。また、DMFには腎障害を軽減する効果があることも組織学的検討により明らかにした。以上よりおおむね順調に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在Nrf2経路の活性化薬であるバルドキソロンが慢性腎臓病(CKD)の治療薬として開発中であるが副作用のため順調に進んではいないようである。同じくNrf2経路の活性化薬であるフマル酸ジメチル(DMF)は現在すでに多発性硬化症の治療薬として承認を受けているので、副作用のプロファイルもおおむね明らかになっている。DMFがCKDの治療に有効であることが明らかになれば、CKDの治療薬としてドラッグリポジショニングを行うことができる。そのために、今後はDMFの作用機序をもう少し明確にしていきたい。すなわち、Nrf2経路を実際に活性化しているかどうかをそのターゲット遺伝子であるNAD(P)H quinone oxidoreductase (NQO1), glutathione S-transferase (GST), heme oxygenase-1 (HO-1), and γ-glutamylcysteine synthetase (γGCS)のmRNA発現を通じて評価する。またNuclear extractのWestern blotと免疫染色により、Nrf2の核内への移行を確認する。実際に酸化ストレスを軽減しているかどうかは8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-Oxo-dG)の免疫染色で評価する。DMFの抗炎症効果をMonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1), tumor necrosis factor-α (TNF-α) のmRNAを定量することにより評価する。このような検討を通じて、DMFの作用機序を明らかにし、ドラッグリポジショニングにつなげていきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のため、出席する予定であった学会がオンラインでの実施に変更され、旅費が余ってしまった。
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Research Products
(1 results)