2018 Fiscal Year Research-status Report
全身性エリテマトーデスに対するtype I IFNを標的とした新規治療法の開発
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18K08386
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高松 漂太 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30584411)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SLE / インターフェロン / 前臨床研究 / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、レポーター細胞と既存薬ライブラリーを用いたスクリーニングにより見出した、IFN-I産生を抑制し得る複数の薬剤から、1)候補薬剤の絞り込み、2) 作用機序の解明、3) SLEモデルマウスによる有効性の評価を行い、臨床応用を目指した橋渡し研究を進めることを目的としている。 本年度は、候補薬剤の中からNAC11(仮称)をピックアップし、NAC11の効果について検討した。その結果、NAC11はLPSはcGAMPによって誘導されるヒトPBMCからのIFN-I産生や、LPSのマウス腹腔投与によって誘導されるIFN-I産生をきれいに抑制することを見出した。そこで、SLEの疾患モデル動物であるNZBWF1マウスを用いて、NAC11による治療効果について検討すると、NAC11により、生存率の延長、体重減少の改善、抗DNA抗体価の上昇抑制、蛋白尿の低減、血清IFN-I活性の低下が認められた。このことから、NAC11が疾患モデルでも効果を認めることが明らかとなった。また、NAC11の薬理作用について検討すると、LPSやcGAMPで誘導されるTBK1のリン酸化がNAC11により阻害され、TBK1の下流で活性化されるIRF3の核移行が抑制され、その結果、IFN-Iによって誘導されるIFN-inducible genesの発現が抑制された。 以上の結果から、現在他疾患で実臨床で使用されているNAC11が、IFN-I産生を標的とした新規SLE治療薬として有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存薬ライブラリーからIFN-I産生を阻害する候補薬剤をスクリーニングし、NAC11という候補薬剤が、疾患モデルマウスで治療効果を示し、その治療標的がTBK1のリン酸化阻害である点を見出した点で、当初の目標を十分に到達できていると考えている。一方、実臨床ではNAC11の副作用について課題があり、IFN-I産生阻害以外のNAC11の薬理効果についての検討はまだ行えておらず、また、治療効果を最大化するための投与方法の検討なども進んでおらず、その点は不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、NAC11を実臨床で使用できるように前臨床試験を進めていくことが求められる。そのために、NAC11のIFN-I産生阻害以外の薬理効果につて、遺伝子発現やエピゲノムに対する影響について、次世代シーケンサーを用いて解析していく必要がある。また、治療効果を最大化するために、リポソーム製剤化や、投与量についても検討を進めていく必要がある。また、NAC11がTBK1を阻害するメカニズムについても検討を進めていく必要がある。 これらを通じて、SLEへの適応拡大を目指した前臨床研究を進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
本年度の研究は、ある程度他グラントを用いて進めることが可能であったが、NAC11によるIFN-I産生阻害以外の薬理作用について、NGSによる解析を検討している。しかし、最低8サンプルでNGSを行う必要があり、多大な費用を要するため、もう少し機能解析を進めた後の2019年度にまとめて実行したいと思い、繰越すこととした。
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