2018 Fiscal Year Research-status Report
新たな選択的Estrogen受容体調節薬を用いた子宮内膜症治療の開発
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18K09290
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
原田 省 鳥取大学, 医学部, 教授 (40218649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 文紀 鳥取大学, 医学部, 准教授 (40322218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / 子宮内膜症間質細胞 / 炎症性サイトカイン / 卵巣チョコレート嚢胞 / エストロゲン受容体調整薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症Estrogen依存性疾患である。子宮内膜症組織ではEstrogen受容体(Estrogen receptor:ER)α発現が少なく、ERαが発現していることを示した。ERβにはERα抑制作用を持つことが示唆されていることから、本研究ではERβを標的とした新しい薬物療法開発を目指す。子宮内膜症細胞培養系と子宮内膜症マウスモデルを用いて、ERα及びERβが子宮内膜症の発生・進展における役割を探索するとともに新規の選択的Estrogen受容体調整薬(Selective Estrogen Receptor Modulator:SERM)による治療開発に向けた研究を行う。子宮内膜症に対しては外科治療と薬物治療が行われるが、術後再発率が高いことと副作用が問題であり、より長期に安全に使用できる薬剤の開発が待たれている。また、これまではホルモン剤による薬物療法が主体であり、基本的に排卵抑制による無月経が主要な作用機序である。既存の薬剤とは全く異なる作用機序を持った薬物の開発は長期の症状コントロールや治療を行いながらの妊娠治療に結びつき、子宮内膜症の薬物療法に新しい展開をもたらす。 現在までに、子宮内膜症のマウスモデルを用いて新しいSERMであるSR-16234の子宮内膜症病変発生への作用を検討した。このマウスモデルは、子宮内膜症の病態である慢性炎症を想定したものであり、薬剤の作用を検証するために適していると考えられる。SR-16234の投与によって子宮内膜症病変の数と範囲が減少するなどの効果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮内膜症マウスモデルを作成して、新しいSERMであるSR-16234の作用について検討した。 子宮内膜症マウスモデルの作成 7週令のメスBALB/cマウスを用いて、卵巣摘出後にエストロゲン(E2)を毎週1回6週間投与した。E2を2週投与時点でドナーマウスから子宮を摘出して細切後、レシピィアントマウスに小切開創から移植した。この時、lipopolysaccharide(LPS)を同時に投与した。その後の4週間にSR-16234、Tamoxifen、Bazedoxifen の投与を行いコントロールと比較した。薬剤投与の4週後にレシピィアントマウスの腹腔内を検索して、子宮内膜症病変の数と表面積をイメージ解析で算出した。病変組織は、遺伝子検索のために処理するか10%ホルマリン液に保存した。ホルマリン固定された組織は、Ki67などの免疫染色を行って薬剤投与の影響を検討した。 SR投与によって病変の数と表面積は優位に減少した。正常な子宮内膜の増殖への影響はみられなかった。SR投与は、LPS投与によって刺激されたInterleukin-6(IL-6)、Vascular endothelial growth factor (VEGF)、Prostaglandin 2(Ptgs-2)およびエストロゲン受容体(ER)などの遺伝子発現を抑制した。Ki-67とER陽性細胞比率は低下し、CD3、F4/80および TLR4発現も低下した。また、病巣におけるNF-κBおよびリン酸化NF-κBの発現が抑制された。マウス子宮内膜症様病巣において、SERMである SRは病巣縮小と炎症抑制効果を示した。本研究結果から、NF-κB 抑制作用を有するSRが新たな子宮内膜症の治療薬となる可能性が示された。今後は、ヒトの子宮内膜および子宮内膜症細胞を用いてSRの作用について検討していく。
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Strategy for Future Research Activity |
SR投与によって病変の数と表面積は優位に減少した。正常な子宮内膜の増殖への影響はみられなかった。SR投与は、LPS投与によって刺激されたInterleukin-6(IL-6)、Vascular endothelial growth factor (VEGF)、Prostaglandin 2(Ptgs-2)およびエストロゲン受容体(ER)などの遺伝子発現を抑制した。Ki-67とER陽性細胞比率は低下し、CD3、F4/80および TLR4発現も低下した。また、病巣におけるNF-κBおよびリン酸化NF-κBの発現が抑制された。マウス子宮内膜症様病巣において、SERMである SRは病巣縮小と炎症抑制効果を示した。本研究結果から、NF-κB 抑制作用を有するSRが新たな子宮内膜症の治療薬となる可能性が示された。今後は、ヒトの子宮内膜および子宮内膜症細胞を用いてSRの作用について検討していく。
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Research Products
(2 results)