2018 Fiscal Year Research-status Report
胎生期の低栄養と出生後の栄養環境が生殖機能に及ぼす長期的影響とその機序の解明
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18K09292
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
岩佐 武 徳島大学, 病院, 特任准教授 (00707903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苛原 稔 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20160070)
松崎 利也 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (70294692)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胎児期低栄養 / 肥満 / 生殖機能 / 栄養代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に施行した一連の研究により、胎児期に低栄養を経験した雌の個体では、出生後のアンドロゲン投与による栄養代謝機能の悪化が顕著となることを明らかにした。具体的には、摂食量を通常の50%未満とした母体から出生した雌のラットでは、出生後のアンドロゲン慢性投与によって体重および摂食量が増加しやすく、脂肪量の増加や脂肪細胞サイズの増大が認められることが明らかとなった。また、これらの個体では脂肪細胞における炎症性サイトカインの発現増加が認められ、これが一連の栄養代謝環境の悪化の原因であることが推察された。一方、胎児期に低栄養を経験した個体では、アンドロゲン投与による生殖機能の低下が軽減されることが明らかとなった。具体的には、性周期障害の軽減、卵巣の形態変化の軽減などが認められた。また、卵巣のステロイド合成酵素の障害が軽減されることが判明した。以上より、胎児期の低栄養が、出生後においてアンドロゲンが栄養代謝に及ぼす影響を増悪させる一方で、生殖機能に対する影響を抑制することが明らかとなった。また、近年、栄養代謝改善機能が注目されているオキシトシンの効果を確認するため、卵巣摘出により肥満となった雌ラットに対して、オキシトシンの慢性投与による効果を検討した。これによって、肥満に対してオキシトシンが摂食抑制、体重減少、脂肪量減少などの有益な効果を及ぼすことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胎児期の低栄養が出生後の栄養代謝機能と生殖機能に及ぼす影響に関して、新たな知見が得られた。また、これに関してその内分泌学的機序が解明された。当初想定していた通り、胎児期における低栄養環境の影響が、出生後の生理環境によって増悪されることが確認された。また、これらの影響が、体内の複数の組織の機能変化によって生じていることも判明した。以上の結果から、当初の研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の検討をもとに、出生後の低栄養が出生後の種々の生理機能に及ぼす影響が、出生後の栄養状態によって増強または軽減されるか検討する。また、それらに関わる中枢、末梢の内分泌学的機序について明らかにする。これらを明らかにした後に、生理機能に対する悪影響を軽減する方策について検討する。具体的には、胎児期に低栄養を経験したラットに対して、出生後に高脂肪食負荷または親への割り当ての数を減少することで過栄養の状態とし、栄養代謝状態と生殖機能への影響と検討する。また、これとは逆に、出生後の栄養制限が、胎児期の低栄養環境の影響を軽減するか検討する。さらに、肥満となった症例に対してオキシトシンなどの栄養代謝改善薬が効果を示すか検討する。
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Causes of Carryover |
支払いが完了していないため次年度使用額が生じた。4月に支払いが完了する予定である。
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Research Products
(6 results)