2018 Fiscal Year Research-status Report
オステオカルシンによるサルコペニア肥満回避機構の解明
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18K09521
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
溝上 顕子 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (70722487)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サルコペニア / インスリン抵抗性 / 酸化ストレス / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニア(加齢性筋肉減弱現象)と肥満を合併した「サルコペニア肥満」は高齢者に特徴的な肥満の形態である。骨基質タンパク質であるオステオカルシン (GluOC)は、全身の糖・エネルギー代謝を改善するだけでなく、GluOCは筋肉量維持にも寄与することが報告された。つまり、GluOC はサルコペニアと肥満の両方にアプローチできる可能性がある。本研究の目的は、サルコペニア肥満の治療標的としての GluOC の可能性を探ることである。 骨格筋の、肥満による慢性的な酸化ストレスモデル細胞として、筋細胞に分化させたL6細胞を高グルコース (15g/L) 培地、あるいは低濃度過酸化水素存在下で培養したものを用いた。これらの条件で培養した筋細胞は、インスリン刺激によるAktのリン酸化が抑えられており、肥満によるインスリン抵抗性モデル細胞として使用できることを確認した。 これらのモデル細胞にGluOCを1時間作用させたのちにインスリン刺激を行い、悪化したインスリン抵抗性をGluOCが回復できるかを検証した。その結果、予想に反してGluOCを添加した細胞でインスリン誘導性のAktのリン酸化が抑制されることがわかった。また、酸化トレスマーカーであるカルボニル化タンパク質もGluOCによって増加することがわかった。一方、通常培地で培養したL6筋芽細胞に対してGluOCを作用させると、インスリン刺激時の糖取り込みに大きな違いはなかったものの、定常状態での糖取り込みがGluOCによって顕著に亢進していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の想定とは異なる結果ではあるが、L6筋細胞に対するGluOCの作用が明らかになり、動物実験を含めた今後の実験の方向性をおおまかに決定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 我々は、GluOCの受容体であるGPRC6Aのエクソン2, 3を含むゲノム領域をLoxP配列で挟んだfloxマウスを作成している。このfloxマウスと骨格筋特異的にCreリコンビナーゼを発現するMCK-Creマウス(The Jackson Laboratoryより購入)を交配して骨格筋特異的GPRC6A欠損マウスの作製に着手する。 2. 筋細胞におけるアポトーシスはサルコペニアを悪化させる要因である。L6筋細胞に対する酸化ストレスによって誘導されるアポトーシスに対して、高グルコース高インスリンの環境が及ぼす影響、またそれに対するGluOCの影響を評価する。 3. マウスの後肢を固定して廃用萎縮モデルを作成する。そのマウスに対してGluOCを投与し、廃用性筋萎縮の程度、萎縮からの回復程度などを比較し、動物の骨格筋に対するGluOCの作用を評価する。
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Causes of Carryover |
動物実験計画の承認に時間がかかったため、当初予定していたMCK-Creマウスの購入およびGPRC6A floxマウスとの掛け合わせを行うことができなかった。承認が下りたので、次年度にマウスを購入し、骨格筋特異的GPRC6A欠損マウスの作成を行う予定である。
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Research Products
(4 results)