2018 Fiscal Year Research-status Report
周術期口腔粘膜炎インディケータとしての唾液炎症マーカーの検討
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18K09889
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
岸 光男 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60295988)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん化学療法 / 口腔粘膜炎 / 口腔カンジダ / 発症予測 / 唾液検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん周術期の口腔粘膜炎発症を予測するための前向き臨床研究を行う上で、ある程度の発症頻度が予測されるがん化学療法患者に対象を絞ることを検討した。従来の報告でがん周術期の口腔粘膜炎の発現頻度は、固形がんに対して抗がん剤を使用する場合は25~55%と報告されている。一方、周術期全般に関わる口腔粘膜炎発症要因として口腔カンジダがあるが、周術期口腔粘膜炎への対応において化学療法と口腔カンジダの2つの要因は区別されることなく総じて論じられてきた。それは、化学療法中に口腔粘膜炎がある頻度で出現するのは薬の副作用として不可避であると考えられてきたためである。それ故、化学療法中の口腔粘膜炎について、口腔カンジダの関与が詳細に検討された例は少ない。 我々は、発症予測に適した臨床集団を選別することを目的に、がん化学療法患者106名における口腔Candida菌の保有状態と口腔粘膜炎の発症頻度及び重篤度との関連を明らかにすることとした。その結果、化学療法開始前にクロモアガーカンジダ培地で口腔カンジダが検出された者では、非検出の者に比べて口腔粘膜炎の発症率が有意に高い(73.1% vs 32.5%, p<0.001)を観察した。また、カンジダ検出、現在歯数、がんのステージを説明変数、口腔粘膜発症を目的変数としたロジスティック回帰分析でもカンジダ検出のみが有意な変数として選択された。さらに、23名の患者について化学療法前後のカンジダ量ならびに粘膜スコアを比較したところ、化学療法開始後にカンジダ量が有意に増加した。また、化学療法開始前にカンジダ量を対数値1.0以上保有していた者10名については粘膜スコアとカンジダ量が高い相関(r=0.872)を呈していた。これらから、化学療法における口腔粘膜炎発症にも口腔カンジダが大きく影響していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究実施前の既存資料による観察研究で、がん化学療法患時の口腔粘膜炎発症に対する口腔カンジダの影響を確認した。これらについては研究倫理委員会の承認を得て行った。しかし、口腔粘膜炎発症に関しては、化学療法の薬剤の種類や施療中の白血球数などの抵抗力が、またカンジダに関しては服薬状況や口腔乾燥状態が強い交絡因子となることが予測される。これらの要配慮個人情報について、当初の倫理審査申請時に利用することを想定していなかったため、分析に際し、新たに倫理審査の申請を行い、承認を受けた。これら分析と倫理審査のプロセス、ならびに今後臨床試験を行う岩手医科大学附属病院外科および血液内科病棟医師との打ち合わせ等に時間を要し、現在のところまだ臨床研究を開始していない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、臨床研究のための最終的プロトコールを作成し、研究倫理委員会に申請中である。承認され次第、以下のプロトコールで臨床研究を行う予定である。 対象と方法:岩手医科大学附属病院外科または血液腫瘍内科において化学療法を用いるがん患者で、主治医から同附属病院歯科医療センター口腔ケア外来に対して口腔管理を依頼された者を対象とする。原疾患の治療スケジュールに合わせ、術前口腔ケア終了日と化学療法(前処置含む)開始直前に唾液採取と口腔粘膜炎の評価を行う。化学療法開始後は期間中毎日同様の唾液採取、SMT(唾液白血球測定簡易キット)検査および粘膜評価を行う。採取唾液の唾液中Hb、LDHの測定は岩手県予防医学協会に委託する。唾液検体は通報に従い、冷蔵保存アイスボックスに入れて搬送する。 解析法:発症前の検査値の変動:術前口腔ケア(スケーリング、TBI)終了時をベースラインとして,化学療法中の粘膜炎発症前の検査値を観察する。ベースラインデータからの検査値の相対的上昇期(臨界期)が肉眼的所見に先行して観察されるかを検討する。さらに、粘膜炎が重症化した場合と軽度で済んだ場合の検査値の動向を比較し、差違があった場合のベースラインデータならびに臨界期の上昇加速度を重症化群と軽度群で比較する。また、唾液検査結果と診療情報との関連を検討し、スクリーニングの交絡因子となる変数を探索する。 予定症例数:約120。
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Causes of Carryover |
「進捗状況」欄に記載したように、本研究において口腔カンジダの分析が必要となった。現有機器によりその分析を実施しようとしたところ、分析過程で必須の純水製造器が破損し、修理不能であったため、新規購入しようとしたところ、年度内に間に合わず、次年度使用額が生じた。次年度はじめに下記機器を購入予定である。 超純水製造装置 Direct-Q UV3 一式
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Research Products
(1 results)