2018 Fiscal Year Research-status Report
二酸化塩素を用いた院内肺炎の予防効果と安全性の検討
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18K10012
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
大日方 薫 順天堂大学, 医学部, 教授 (10204281)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 院内肺炎 / エアロゾル感染 / 二酸化塩素 / 環境感染対策 / 薬剤耐性菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児病棟に入室する中等症以上の気道感染症患児に対し、気管吸引液あるいは上咽頭粘液の細菌培養およびマルチプレックスPCR法(呼吸器系17微生物)を用いて原因微生物の検出検査を実施した。検出した病原微生物および患者の背景として気管切開術施行、人工呼吸管理、慢性肺疾患、重症心身障害車などハイリスク因子との関係について検討する。 入院後48時間以降に発症した院内肺炎の原因微生物には一般細菌のみならずメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌などの薬剤耐性菌がある。感染経路として呼吸管理中の気管吸引操作時のエアロゾル感染が特に問題となるため、院内肺炎の予防対策として閉鎖式吸引システムの使用、体位変換、人工呼吸器回路の頻回交換が行われている。さらに病室の消毒、清掃などの環境整備、特に空間環境感染制御も重要であり、医療経済的にも有効な感染予防策の徹底が求められている。そこでハイケア病室に入室した患者に対し、経時的にアクティブサーベイランスを実施する。 二酸化塩素の安全性について米国産業衛生専門家会議は二酸化塩素の許容濃度を1日8時間、週40時間の労働において0.1 ppmと定めている(1994)。日本二酸化塩素工業会では、ヒトが一生涯にわたって摂取しても健康への有害な影響を受けないであろうと判断される二酸化塩素濃度として室内濃度指針値0.01 ppmを設定した(二酸化塩素の自主運営基準設定のための評価について-ガス製品-2014)。これら二酸化塩素の許容暴露濃度や室内濃度指針値を基に、病室内の二酸化塩素濃度を二酸化塩素センサーで測定し、安全性を確認した上での製品の使用を管理するとともに、入院患者や医療従事者の有害事象を記録することで、二酸化塩素製品の使用における安全性を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市中気道感染症では一般細菌である肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラカタラーリスの検出が多く、ウイルスではライノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスが高頻度に認められた。一方、院内肺炎ではブドウ球菌、緑膿菌、アシネトバクターバウマニの薬剤耐性菌が検出され、特に患者背景として人工呼吸器装着および気管切開術施行患者で高率に検出された。 本研究の実験場所は病院内の環境であり、関係部署との調整を行った後、二酸化塩素製品を設置および使用することで実験を開始した。二酸化塩素ガス濃度測定装置は市販品を購入し、6ヶ月間、病室に設置して環境中の濃度を測定して設置場所、交換頻度について検討した。また安全性についてはアンケート調査を行ったが、有害事象は見られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
院内肺炎予防として二酸化塩素によるエアロゾル感染および接触感染の抑制効果および安全性についてハイケア病室に入室するハイリスク患者に対し、経時的に病室・病棟別にアクティブサーベイランスを実施することにより検討する。二酸化塩素によるエアロゾル感染および接触感染の抑制効果および安全性の確認により人的、経済的に負担の少ない新たな院内感染対策法の開発が期待できる。二酸化塩素の高い抗菌活性に着目し、二酸化塩素ガスによる空間での感染制御と同時に水溶液による清拭を行う接触感染予防策を考案した。この組み合わせによる感染予防法は実際の病室では、初めての検討となる。発生装置を病室内に設置することにより、室内空間において人的な負担はほとんどなく有効な微生物低減効果が得られると予測される。人体に対する安全性についても低濃度であるため影響はほとんどないと考えられる。 二酸化塩素は常温ではガスとして存在し、水に溶けて水溶液となる。二酸化塩素水溶液は様々な細菌、ウイルス、真菌に対して次亜塩素酸ナトリウム溶液と比べて低濃度で有効であり、低濃度二酸化塩素ガスも浮遊細菌・ウイルス、付着細菌・ウイルス等への有効性が報告されている。インフルエンザウイルスではマウスのエアロゾル感染モデルでの有効性が確認され、ヒトのインフルエンザ様疾患に対しても有効性が証明された。また、二酸化塩素水溶液はMRSA、多剤耐性緑膿菌・アシネトバクターへの有効性が証明されている。二酸化塩素ガス、水溶液は院内肺炎の原因微生物のエアロゾル感染においても十分な効果を発揮すると考えられ、従来から用いられているHEPAフィルターと併用することにより予防効果が更に向上するものと考えられる。
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Causes of Carryover |
マルチプレックスPCR法(呼吸器系17微生物)を用いたアクティブサーベイランスを開始するまでに6ヶ月以上を要したため、十分な検体採取がまだ行われていない。 今後は二酸化塩素製品のうち、クレベリンS(スプレー)、クレベリンG(ゲル)、二酸化塩素ガス濃度測定装置は市販品であるため購入する予定である。 さらに学会発表の費用についても使用する予定である。
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Research Products
(4 results)