2019 Fiscal Year Research-status Report
クエン酸の疲労軽減効果の客観的評価とGADD34に着目した分子メカニズムの検証
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18K11030
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
渡辺 睦行 昭和女子大学, 生活機構研究科, 准教授 (90365809)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クエン酸 / 疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
疲労を感じている日本人は多い。一般的な疲労は休養によって回復するが、過度の疲労が継続すると心身に様々な悪影響が生じる。そのため、疲労を緩和する食品成分の探索は重要であると考えられる。最近の研究で、疲労感は肝臓でのeIF-2αのリン酸化→ATF-3の上昇→IL-1βの産生→脳が感知するにより生じ、GADD34はeIF-2αの脱リン酸化により疲労感を軽減することが明らかにされた。 そこで本研究では、マウスを用いた抗疲労モデル(クエン酸を投与した後、一定時間マウスを遊泳させ、疲労に関連する指標を評価するモデル)と疲労回復モデル(マウスを限界まで遊泳させた後、クエン酸を投与し、経時的に疲労に関する指標を評価するモデル)を用いて、クエン酸投与が疲労に与える影響とそのメカニズムを検証した。 その結果、抗疲労モデルでは、クエン酸を投与したマウスでは遊泳時間は有意に延長したものの、肝臓および骨格筋の両臓器におけるATF-3, IL-1β, GADD34に影響はみられなかった。一方で、クエン酸投与は骨格筋におけるPck(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ)のmRNA発現を上昇させた。Pckを過剰に発現させたマウスでは運動量が増加したとの報告もあることから、クエン酸による疲労軽減には骨格筋のPck発現の上昇が関与している可能性が示された。 疲労回復モデルでは、クエン酸を投与していないマウスでは、肝臓でのIL-1βの産生が疲労負荷30分後および60分後に有意に増加したが、クエン酸を投与したマウスでは有意な増加がみられなかった。このクエン酸の効果にはGADD34が関与している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗疲労モデル、疲労回復モデル、いずれにおいても、適切な疲労評価モデルであることが示され、これらのモデルを使いクエン酸投与の影響を検証してきた。ほぼ計画通りに研究は進んでおり、また、計画時には想定しなかったクエン酸投与による骨格筋でのPck発現の上昇など、新たな知見も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、疲労とストレスは相反するものであることが報告された。疲労感は肝臓でのIL-1βの産生に起因し、いわゆる「休め」のシグナルであるのに対し、ストレスは副腎での反応であり、いわゆる「頑張れ」のシグナルである。従って、この2つを区別して研究する必要性があると考えられるため、研究計画に記載されている疲労に関する指標だけでなく、ストレスに関する指標についても一部測定する予定である。
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Research Products
(1 results)