2018 Fiscal Year Research-status Report
マルチフェイズ並列解法による多相連成災害の予測と現象解明
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18K11337
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牛島 省 京都大学, 学術情報メディアセンター, 教授 (70324655)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルチフェイズモデル / 相平均モデル / 固気液多相場 / 流体固体連成 / 局所洗掘現象 / 浸透流 / 並列計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
粘弾性流体を表すモデルの1つである非圧縮性・上対流マクスウェルモデルを利用した粘弾性流体の数値計算手法を検討した.この計算手法では,マクスウェル流体の構成則を含む基礎方程式系をコロケート格子上で有限体積法により離散化する.特に,運動方程式中の応力項を計算する際の流速の参照点を空間的にコンパクトにする手法を提案し,これによって計算中に発生する非物理的な数値振動を抑制できることを数値実験により確認した. 接触を伴いながら移動する多数の固体粒子と気液相との力学的な連成を扱うことが可能な並列計算手法の適用性を検討した.この解法では,固体粒子に作用する流体力は,相平均モデルにより計算された圧力と粘性の発散を体積積分して求められる.また,固体粒子は,複数の四面体要素により表現され,表面内部に接触判定球を配置して,個別要素法により接触が扱われる.約16,700個の平均粒径約7mmの礫粒子を含む約80mmの礫層に,流速約1.2m/sの鉛直噴流を3秒間衝突させる実験結果に,この解法を適用した.計算には,京都大学のスーパーコンピュータ CRAY XC40を利用し,4,352コアを利用する並列計算を行った.その結果,礫粒子移動過程は, (A) 非平衡洗掘過程, (B) saltation-collapse平衡状態,(C) 安息角静止状態,という3段階に分類され,それぞれの過程が適切に計算されることを確認した. また,上記の計算手法を用いて,ダルシー側が成り立つ低レイノルズ数領域における多数の粒子間隙を流れる浸透流の計算を行った.その結果,間隙に対するセル分解能の影響等が明らかになり,数値計算で推算される透水係数は,既往の経験則から得られる値をほぼ再現することが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粘弾性流体を表すモデルの1つである非圧縮性・上対流マクスウェルモデルを利用した粘弾性流体の数値計算手法を検討した.この計算手法では,マクスウェル流体の構成則を含む基礎方程式系をコロケート格子上で有限体積法により離散化する.特に,運動方程式中の応力項を計算する際の流速の参照点を空間的にコンパクトにする手法を提案し,これによって計算中に発生する非物理的な数値振動を抑制できることを数値実験により確認した.このように粘弾性流体に対する計算手法の構築が順調に進められている. 3次元固気液多相場の並列計算手法 (MICS) を用いて,約16,700個の平均粒径約7mmの礫粒子を含む約80mmの礫層に,流速約1.2m/sの鉛直噴流を3秒間衝突させる実験結果に,相平均モデルを用いるマルチフェイズ解法を適用した.計算には,京都大学のスーパーコンピュータCRAY XC40を利用し,4,352コアを利用する並列計算を行った.その結果,礫粒子移動過程は, (A) 非平衡洗掘過程, (B) saltation-collapse平衡状態,(C) 安息角静止状態,という3段階に分類され,それぞれの過程が適切に計算されることを確認できた.このように,並列計算手法(MICS)により礫粒子の詳細な輸送過程が再現できることが確認されている. 上述並列計算手法 (MICS) を用いて,均一な球を規則的に配置した場合,また混合粒径粒子をランダムに配置した場合の間隙流体計算を行い,計算で得られた透水係数が既往の実験式とほぼ一致することを確認した.さらに,流体-構造連成計算で頻用される埋め込み境界法や本手法のような相平均モデルで重要となる,流体計算の時間刻み幅や流体計算セル幅が計算結果に与える影響について検討し,浸透流のミクロスケール解析を進める見通しが得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
粘弾性流体を表すモデルの1つである非圧縮性・上対流マクスウェルモデルを利用した粘弾性流体の数値計算手法を3次元場に拡張するとともに,並列計算手法を導入して大規模な問題を扱えるよう検討を加える.特に,ニュートン流体と粘弾性流体が共存する場を対象とする各種の応用力学問題に計算手法を適用する計画である.流れの状態により形状が変化する粘弾性流体の粒子群の間隙を通過するニュートン流体の挙動も検討対象にする予定である.さらに,ニュートン流体と粘弾性流体中に,剛体が存在する場合のマルチフェイズ解法についても検討を加える. 礫群と流体との連成解析手法による計算結果が順調に進められていることから,粒径がさらに小さい粒子群を対象とした大規模計算を行い,間隙水圧の変化などを抽出して,礫群輸送の非定常過程のメカニズムを数値解析結果から解明する. また,浸透流の計算では,ダルシー側が成立しない高レイノルズ数領域のミクロスケールの浸透流計算を進める予定である.さらに,Euler-Euler型の流体構造連成解析手法を用いて,粒子の大きさや形状が水分含有量により変化する高吸水性樹脂粒子の間隙流など,より複雑な現象に適用できるよう,モデルの改良を進める.
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