2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K11585
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Research Institution | Shonan Institute of Technology |
Principal Investigator |
斉藤 友彦 湘南工科大学, 工学部, 准教授 (50464798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平澤 茂一 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (30147946)
松嶋 敏泰 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30219430)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教育工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校におけるプログラミング教育が2020年度から必修化された.プログラミング教育は我が国におけるIT技術者不足を解消するための有力手段であり,プログラミング教育の重要性は益々高まると考えられる.しかしながら,小学・中学・高校の現場ではプログラミングを教えられる人材が圧倒的に不足しており,現時点で十分なプログラミング学習環境が整っているとは言えない.一方,ディープラーニングをはじめとする機械学習など,AIやITの技術は目覚ましい進化を遂げている.本研究ではプログラミング教員が不足している現在,AIやITの技術自体でそれを克服するという試みである.本研究ではあたかもAIのコーチがプログラミング学習を指導するようなシステムを開発することが目的である. 本年度の主な成果はプログラミング学習用のユーザインタフェースの実装に関するものである.例えば,昨年度に引き続き,チャットボットを使った学習システムの開発及びその学習効果に関する検証を行った.チャットボットは,人間とコンピュータ間で話し言葉を用いて会話するソフトウェアである.本年度はデータベースの充実を図り,昨年度よりも学習効果の高いシステムを実現した.また,本年度はVRを用いたユーザインタフェースを新たに提案した.特にVRにおけるCUI(Character User Interface)操作を新たに提案した.今後これらの研究は教育用VR環境を構築する上で応用することが可能である.なお,これらの成果は情報処理学会第85回全国大会で発表している. また,本年度は自然言語処理の技術を用いた,大学カリキュラムにおける各授業の関連度の導出及びその可視化を行った.その他,本研究の副産物として,画像認識の技術を用いた車載動画からの自己位置推定に関する研究を行った.いずれの研究もその成果を情報処理学会第85回全国大会で発表している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」でも述べた通り,本年度の主な研究成果はプログラミング学習用のユーザインタフェースに関するものである.具体的には学習用チャットボットの開発とその学習効果に関する検証,及び教育環境用VRに向けたVRのCUIの提案である.これらの研究は本研究の最終目的であるあたかもAIのコーチがプログラミング学習を指導するようなシステムを開発する上で重要な要素となる. 一方,現在までの進捗状況区分は「やや遅れている。」とした.この主な理由は次の二つである.一つは新型コロナウィルスの影響である.新型コロナウィルスの影響はだいぶ少なくなったものの,対面での実験を思い通りに進めることができなかった.なお,現時点で対面に関する規制はだいぶ緩和されたので,次年度での影響はほぼないと考える.もう一つはAI(Artificial Intelligence)技術の急速な進化の影響である.昨年度,Chat GPTをはじめとする生成系AIの進化により,教育業界をはじめ様々な分野に影響を与えた.当然プログラミング教育においても例外ではなく,これまでのプログラミング学習が根底から変わろうとしている.もちろんプログラミンの知識や技術がこれからも重要なものであることに変わりはないが,そのこれまで身につけようとしていたプログラミング技術の何が重要で何が重要でないかはいったん立ち止まり新たに考察すべきと考える.また,システムの要素として使用できるAIの技術も急速に発展したので,利用すべき道具も新たに考察し,研究を進める.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」でも述べた通り,Chat GPTをはじめとする生成系AIの著しい進化はプログラミング教育や教育業界全体に大きな影響を与えた.今後は,本研究を通じて生徒や学生に身につけさせたいと考えていたプログラミングの知識や技術の何が重要で何が重要でないかの精査を改めて行った上で研究を進める.また同時にシステムの要素として使用できるAIのツールに関しても精査を行う. これらを踏まえた,次年度の目標は次の通りである.一つ目は今年度に引き続き,VRを用いた教育環境の構築及びその検証である.本年度はVRにおけるCUIとそれを応用したVR環境の開発を行ったが,次年度はこれを応用した教育用VR環境の構築を行う.教育用VR環境を構築するためには,環境に適した多くのコマンドを提案・実装する必要がある.次年度はこれらを実装し,その操作性を検証する.更には,そのVR環境を用いて,実際のプログラミング教育を実施し,その学習効果について検証する.学習環境は学習効果に大きな影響を及ぼすため,このシステムは本研究の最終目標である「AIコーチによるプログラミング学習システム」の重要な要素となる.また,学習環境の重要性は生成系AIの進化には影響されない. 二つ目はChat GPTを用いたプログラミング学習の検討である.2022年に公開されたChat GPTはプログラミングにおいて特に精度の高い回答を示しており,いまやプログラミングの作成や学習において,無視できないものである.本研究では,これを用いた使用方法を,プロンプトを含め検討し,その学習効果の検証を行う.本研究では,これらの全てを用いて,プログラミングを学習する全ての高校生や大学が有用だと考えるプログラミング学習システムを開発する.
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は主に二つである.一つ目は新型コロナウィルスの影響で多くの学会が中止,オンライン開催になったからである.研究成果を効果的に発表するためには対面での発表の方が良いと判断し,一部の研究をオンラインで発表した以外は,学会での研究発表を見合わせた.二つ目は同じく新型コロナウィルスの影響により,思うように検証実験が進まなかったからである.本年度は大学生を多数集めた検証実験を予定していたが,社会状況を鑑み,実験を中止した.そのため想定していた研究成果が得られず,投稿や対外発表が進まなかったからである. 次年度の主な使用計画は対外発表のための学会参加費及び旅費である.次年度は新型コロナウィルスも終息に向かい,学会に参加できる可能性も増えると考えられる.その際の学会参加費及び旅費として使用する予定である.
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