2022 Fiscal Year Annual Research Report
Virtual Space Realization of P. Boulez's "Repons"
Project/Area Number |
18K11605
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Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
今井 慎太郎 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (80439554)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 立体音響 / 空間音響 / イマーシブオーディオ / レポン / ブーレーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
最終の研究成果となる、対象楽曲を仮想空間における自由な位置で聴取できるソフトウェアの開発を完了し、インターネットにてソースと共に公開した。同様の試みに前例はなく、対象楽曲の具現化方法として新たな提案を行えた。さらに、メタバース空間における音楽表現とその実装法について、今後の礎となるのを期待できる。一方で、現実空間での演奏に比較して、聴取位置の変更による新鮮な感覚は、今回の研究成果では得られなかった。音楽といえど、その体験には視覚的な要因が大きいことを再確認した。 今年度は、パンニング及びバイノーラル処理のアルゴリズムついて、簡素化とオープン化の両側面から、全面的に見直しを行った。簡素化が必要となった理由は、開発に使用したマシンでは問題のない処理が、一般的に使用されているものには過重であったためである。また、第三者による検証や改変を容易にするため、すべてのプログラムを、開発環境である「Max」の標準機能のみで完結させることにした。 パンニングについては、DBAP等と併用するのではなく、使用するサウンドファイルの数を必要最小限にし、バイノーラル処理と距離減衰、残響付加をすべて個別に行うようにした。それにより音源定位も向上した。バイノーラル処理のためのHRIRの畳み込みは、演算リソースを多く必要とする時間領域ではなく、周波数領域で行うようにした。かつHRIRは事前にFFTを実行して結果をテーブルに記録し、それをリアルタイムの畳み込みに用いることで、処理を大幅に軽量化できた。 聴取位置について、あくまでも音楽的な破綻は来さないよう、アンサンブルとソリストの中間となる円周上に限定し、かつ方向を360度回転できるようにした。ソフトウェアに付与した、自動でそれらを回転させるモードにおいては、ブーレーズが音楽表現でたびたび用いていた「渦」のモティーフに、新たな演奏解釈を加えられたと考える。
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Remarks |
研究成果となるソフトウェアを上記Webサイトにてダウンロード形式で公開している。
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