2018 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Analysis of Transaction Cost in Rule-making and its Implementation in National Parks
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18K11748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 俊徳 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (30612452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国立公園 / 利用ルール / 合意形成 / 取引費用 / 省庁間調整 / 自主ルール / ガイド認定制 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は取引費用に関する文献整理に加え、利用ルールの策定を行っている国立公園に関する情報収集及び現地における予備的調査を行った。 取引費用に関しては、特に政治学からのアプローチに関する既往研究を整理し、本研究への適用可能性を検討した。取引費用政治学としては、ホーンによるモデルが知られるが、経済学における本人・代理人モデルを政官関係に適用していることから、本研究のように、現場レベルの政策形成過程を分析する際には適用できない点が多く、本研究独自の分析枠組みを確立する必要が明らかとなった。本研究では、とりわけ、合意形成にかかるコスト(ホーンの言う立法コストに類するが、与党・野党という明確な対立関係が存在せず、利害関係者や地域特性が顕著)、また、政策起案者(本研究では、現場レベルの政策立案を担う環境省の自然保護官や地方自治体の担当者を想定)が2-3年毎に交代する日本特有の行政慣行から生じる不確実性をコミットメント・コストに代替することを定めた。 次に、利用ルールの策定を行っている国立公園に関する網羅的な情報収集を行い、とりわけ、本研究の目的に適合するものとして、登山道(NZのミルフォード・トラックや米のジョン・ミューア・トレイル、台湾の玉山)、車道(日本におけるマイカー規制や豪州等における車両規制)、河川(日本の保全利用協定)、島嶼(入域税の徴収)を抽出した。ただし、いずれのケースにおいても、各利用ルールの依拠する法制度や組織はもとより、合意形成過程や実施構造に関する十分な把握が必要となるため、事例をより絞り込む必要が示唆された。 また、台湾と豪州(NSW州)の国立公園制度と利用ルール策定に関する現地調査を行い、対象とすべき事例の抽出や信頼関係の構築を行った。この二国は、一元管理型の米と異なり、省庁間調整が存在するため、日本の事例に対して多くの示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ユネスコや文部科学省をはじめ、突発的なプロジェクトの依頼が多く、必ずしも研究に専念できる環境ではなかった。ただし、招聘された講演会や委員活動の多くは、本研究に密接に関係するものであり、情報収集の効率は悪くなかった。本研究に直接関係する原著論文の投稿は出来ていないが、本研究に関する講演や新聞への寄稿を通じて、研究の進捗状況を公表する機会を持つことができた。また、取引費用に関する視点からネットワーク型組織を論じた本(チャプター)が発刊されるなど、一定の成果が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は研究の進捗状況を国内外で発表し、助言を得るなどして、論文執筆に繋げることを目的とする。すでに、日本行政学会(5月)、環境法政策学会(6月)、EROPA(行政に関するアジア・太平洋機関/9月)において発表することが決まっており、その準備を行う。 また、定量化が比較的容易と考えられる一元管理型国立公園(米,NZ)における現地調査を実施し、データを取得する。すでに米内務省国立公園局の現地管理官に依頼を出しており、内諾を得ている。複雑性の高い日本の国内事例については、省庁間調整をはじめとする各種手続き等を聞取り調査から精緻化していく作業を継続する。利害調整は、依拠する法制度や地域特性のみならず、担当者が随時変わる日本の特性も考えると、粘り強い調査が必要となるだろう。アメリカ型と日本型の中間と目される台湾や豪州の事例も引き続き情報収集し、スケジュールが許せば、より精度の高い調査を行い、比較分析に資するデータ取得を行う。 最後に、これまで同様、講演会や一般誌・新聞への寄稿など、調査で得た知見を社会に広く還元する。
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Causes of Carryover |
突発的なプロジェクトが複数入ったため、時間の制約から予定通りの調査を実施することができなかった。また、遠隔地を想定していた発表機会が、招待講演や都内実施となるなど、予算の節減につながった。初年度に実施できなかった調査を行う予定である。
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Research Products
(14 results)
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[Book] ユネスコエコパーク2019
Author(s)
松田 裕之、佐藤 哲、湯本 貴和
Total Pages
343p (第六章担当)
Publisher
京都大学学術出版会
ISBN
481400205X
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