2020 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原発事故後の新安全目標-過去・現在の分析と将来の望ましい目標-
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18K11762
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
勝田 忠広 明治大学, 法学部, 専任教授 (80552463)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 原子力 / 福島第一原発事故 / 費用便益分析 / 規制影響分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は1) 海外諸国の最新の研究の動向調査と本研究への適用可能性の調査分析、そして2)規制影響分析(RIA)と費用便益分(CBA)は日本の実務の場での対応状況と導入可能性についての調査を行った。 1) について、特にCass R. Sunstein氏(ハーバード大学)による費用便益分析研究を参考にCBAの日本の原子力政策への適用可能性について分析した。その結果、米国の情報規制問題局(OIRA)など、原子力規制機関以外の仕組やその重要性が明らかになった。 2) について、2020年9月に原子力規制委員会の検討チームの場において費用便益分析の重要性や意義を発表し、意見交換を行った。まず広く諸外国では「社会的」費用便益分析を活用していることを紹介した。例えば米国原子力規制委員会(NRC)による取組の例としては使用済み燃料のプール貯蔵から乾式貯蔵への移行の評価、NRCの安全目標(定性的安全目標と定量的安全目標)のうち後者に沿うように評価し、補足としてCBAで評価されている例、NRCスタッフの見解によりフィルターベントに関するCBAによってその設置が規制上確かな措置とされていること等を示した。また諸外国では、規制だけではなく政策全般のツールとして利用されていることも紹介した。例えば英国のグリーンブックは、根拠に基づく政策立案(EBPM)を行っており、政策介入についての社会的・経済的・環境的なインパクトの評価をしている。このように諸外国ではCBAの限界を理解しつつ改善を加えながら適用されており、全ての損益を網羅することは困難であることも理解していることを説明した。しかし意見交換の結果、やはり日本の行政機関には抵抗感が強いことが明らかになった。もし規制期間が適用を拒む場合でも事業者がCBAを提示することは可能だと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究は続いているが、海外だけでなく国内の出張も新型コロナウイルス感染症拡大のために実行できずにいる。文献調査、及び国内の原子力安全規制の場での取材等はできているが、全く新しい研究者との交流、学会や研究会の参加、従来にない新しい着想を得るような研究の機会は得られていない。また感染症拡大のため大学業務が大きく変化し、その学内業務の対応に時間をとられた結果、研究業務に時間をかけることが困難となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで集めた文献の分析結果、および原子力安全規制の現状を参考にして費用便益分析の試算を行う。そして論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大に伴う出張等の計画の変更により、研究費仕様の計画に変化が生じたため。
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