2021 Fiscal Year Research-status Report
福島第一原発事故後の新安全目標-過去・現在の分析と将来の望ましい目標-
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18K11762
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
勝田 忠広 明治大学, 法学部, 専任教授 (80552463)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原子力 / 福島第一原発事故 / 費用便益分析 / 規制影響分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、費用便益分析のため行動社会学について文献調査を行った。また原子力規制委員会における継続的安全性に関する検討チームで議論を行い、情報の「欠け」に関する分析を行った。例えば現在の東京電力柏崎刈羽原発のテロ対策不備に伴う処分を参考に以下のように整理した。 今回の問題によって1000億円の収益を失ったとする(原発1年分の電力による収益)。東京電力はこの収益と「何か」を比較考量し、テロ対策を放置するという結論に至ったことになる。 1.テロ対策の必要性を理解していない場合:1000億円の収益/損害と比較検討する段階にはないといえるが、原子力発電を運転してきた事業者としてはありえない(例えば日本は2015年以降のIAEAのIPPASを受けフォローアップミッションでは政府と柏崎刈羽原発でジョイントエクササイズを行っている。これが意味をなさなかったのであれば、IPPASの取り組み自体が妥当であったのか再確認が必要)。この政府も含めた現在のテロ対策に関する対応・規制の在り方が「かけ」になる。 2. テロ対策の重要性を理解している場合:1000億円の収益/損害と比較した上で、それよりも重要な何かがあったということになる。(1) 東京電力が行わなかった対策費用が1000億円の収入/損害を超えていた場合:不確実性の高い事象に伴う高額な出費より目先の確実で短期的な収入を選択したといえる。この場合、津波対策を行わなかった福島第一原発事故と同様の問題なので事業者の企業倫理が「かけ」になる。(2) 東京電力が行わなかった対策費用が1000億円の収入/損害をこえなかった場合:他に優先すべき何かがあったことになる。廃炉費用として柏崎刈羽原発の再稼働に伴う収益が想定されている場合、安全性を軽視しても廃炉費用を得ようとした点について、規制側は再考を求めるべきで、また収益の計画の不備が「かけ」になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
海外だけでなく国内の出張も新型コロナウイルス感染症拡大のために実行が困難な状況にある。全く新しい研究者との交流、学会や研究会の参加、従来にない新しい着想を得るような研究の機会は十分に得られていない。また感染症拡大のた め大学業務が大きく変化したこともあり、その学内業務の対応に時間をとられた結果、研究業務に時間をかけることが困難となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで集めた文献の分析結果、および原子力安全規制の現状を参考にして費用便益分析の試算を行い、海外への学術論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大に伴う出張等の計画の変更により、研究費仕様の計画に変化が生じたため。
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