2019 Fiscal Year Research-status Report
「森のゾミア」論に向けた東南アジア山地狩猟採集民ムラブリに関する学際的研究
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18K11796
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
二文字屋 脩 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 講師(任期付) (50760857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
才田 春夫 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (80350742)
伊藤 雄馬 富山国際大学, 現代社会学部, 講師 (10795488)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 森のゾミア / 東南アジア大陸部 / ムラブリ / ポスト遊動狩猟採集民 / タイ北部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、様々な民族集団が暮らすタイ北部で唯一の狩猟採集民と知られるムラブリを対象に、ムラブリの文化的特質を学際的なアプローチから明らかにすることで、今日の東南アジア山地研究(ゾミア研究)の学問的空白を補うとともに、「森のゾミア」論を構築することである。二年目となる2019年度は、前年度で確認した研究調査スケジュールに基づいて調査研究を行った。タイ北部ナーン県での現地調査は各研究者がそれぞれ実施し、自身の研究課題に沿った研究調査を行なった。人類学班は、前年度に引き続き遊動性と社会性の関係について参与調査を行いつつ、ムラブリのエスニック・アイデンティティの特徴について聞き取り調査を行うとともに、他民族との民族間関係について調査を行った。言語班は現地調査を行い、感情を表す語彙について調査を行なった。また、基礎語彙ではない周辺的な語彙の収集を実施した。農学班は森林資源利用に関する調査を月に行い、先人の森林植物に関する知識の一部が若い世代に伝承されていることを確認した。なお、これらの調査は、被調査者の同意を得て行われた。そして各研究者が学会発表や論文執筆などを通して研究成果の公開を行った。加えて、2019年12月には、早稲田大学にて公開シンポジウム「森の民ムラブリのいまむかし」を開催した。本シンポジウムでは、遺伝学や発育発達学、文化資源学の研究者も発表者として登壇し、多くの参加者とともに議論を交わした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究者は本研究課題における自身の役割に応じて文献研究と実地調査を実施してきた。これまでの研究調査で得られた知見は国内・国外で開催される学 会での研究発表や論文として公開され、研究課題の内容に沿った成果を上げることができた。なお、2019年度の各研究者の研究活動は以下の通りである。人類学班は定住化による対内的かつ対外的な社会関係の質的変化を念頭に、好まざる状況に対する対処のあり方に遊動性との連続性を見出し、それを「遊動民的身構え」として議論し、論文を発表した。また、ムラブリのエスニック・アイデンティティの特質について、周辺民族のそれとの比較を通して明らかにし、論文を発表した。言語学班は、国際学会の査読付き研究発表2件,また、その内容を元に英文雑誌に投稿するための論文を執筆中である。農学班は、森林資源利用に関する知識に関する調査結果を研究ノートとして発表した。各班の研究成果は学会発表や論文執筆など、徐々にその成果が形になっており、おおむね順調に進展してきているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もまた各研究者が引き続き各自の専門に基づいて本研究課題に関連した研究調査を実施していくと同時に、最終年度となる本年度はそれぞれの知見を統合し、「森のゾミア論」の構築に向けた作業を進めていく予定である。そのためにも、本年度もこれまでの研究調査の成果に基づく研究成果を多様な形で公開していく。なお、研究者間のやりとりは、コロナに起因する昨今の状況を踏まえ、オンライン会議で定期的に各研究課題の進捗状況を確認し合っていく予定である。また、これまでの成果を洋書の刊行を通して国内外に広く公開していくことで話が進んでいる。これについてもオンライン会議やメールでのやりとりを中心に、具体的な内容を詰めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、購入予定の書籍が安価で入手できたためである。翌年度分は予定よりも高額な物品を購入する必要がある可能性もあるため、次年度使用額はその補填として使用する予定である。なお、翌年度分として請求した助成金はこれまでと同じく現地調査や国際学会参加に掛かる旅費や人件費、そして物品購入費に当てるものとする。
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Research Products
(11 results)