2019 Fiscal Year Research-status Report
服薬安全のためのLED照明等異なる光源下での医薬品色彩変化範囲と混同色の検証
Project/Area Number |
18K11977
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Research Institution | Hyogo University of Health Sciences |
Principal Investigator |
石崎 真紀子 兵庫医療大学, 薬学部, 研究員 (20623979)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 初男 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (00229311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 服薬環境 / 光源色 / 処方薬 / 識別性 / 色変化 / 高齢者 / ユニバーサルデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、色彩的類似性が高い日本の処方薬が服薬時の光源の違いによって、さらに識別性が低下し、服薬ミスを引き起こす危険性に着眼した。特に加齢により視覚機能が低下する高齢者にとって、光源によって混同されやすい錠剤の色彩範囲を発見することで、安全な服薬環境を提言することを目的としている。 まず、錠剤色として、研究代表者らの先行研究により明確になった日本の錠剤に多い高明度、低彩度のピンク群、黄赤群、黄群、白群の色票を選定した。選定の方法としては、錠剤サイズに近い10㎜×10㎜にカットした99色(明度8以上、彩度5以下、色相0.4RP~6.1GY)の色票(ベンジャミンムーア社製)を、mGy(ミディアムグレー)の台紙上で、照度1000ルクス以上を確保した環境で、65歳以上の被験者23名にピンク、黄赤、黄、白に分類させた。また分類できないものは省かせた。色の知覚は個人差があるため、20名以上が判断したもので色群を構成することとした。その結果、白群19色票、ピンク群18色票、黄群16色票、オレンジ群8色票を選定した。 高齢者の服薬環境として、さまざまな光源が想定される。LED照明がすべての家庭、部屋には普及していないことから、蛍光灯、白熱電球も範疇に加え、また光源色も昼白色、昼光色、温白色、電球色などを用意した。さらに、照度の変更が可能な可変型の光源を用意した。照明を点灯しない時間、自然光については、安定した照度、色温度が必要なため、標準光源装置において北窓昼光としてのD65や日没光を使用することにした。 61色の色票を、それぞれの光源の下、色彩輝度計(コニカミノルタ製)で測色し、照明の違いによる色票の測定値の変化を検証中である。検証方法としては、色群ごとに照明下の測定値をCIE 表色系のxy図にプロットし、色範囲が移動(例えば黄から黄赤に移行)の有無、度合い、またどの照明間で生じやすいかを見出すこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試料づくりにおいて、日本の処方薬の微妙な色彩を表現する色票を検討した結果、インテリアや塗料会社の作成する色票が暖色系が多く微細な色合いを取り揃えており活用できると判断し、ベンジャミンムーア社製の色票を使用することとした。 しかし、2000色近い色票の中から試料となる色を選定する作業に予定より時間を要した。具体的には、まず目視でJIS標準色票などと比較しながら暖色系色相で明度8以上、彩度5以下を選び出し、標準光源装置のD65(北窓昼光)の光源下で測定した。それらを色相ごとに分類し、彩度と明度ができるだけ同尺度で段階的に変化するよう選定しようと試みた。また、日本の処方薬に最も多い「わずかに色みのある白」を選定したが、かなり測定値が近く、目視で差がない色が多くなりすぎたため、再度、明度が9以上で彩度が0に近い、いわゆる「明るい白」を選定し直すなど調整した。最終的には約300色から99色に絞り込んだ。これらの色票に高齢者の知覚という視点から、65歳以上の被験者に協力を得て、さらに絞り込みをして、4つの色群、計61色の試料を確定した。 その後、各種光源下での色票の測定を始めたが、2月以降の新型コロナ感染拡大防止ための自粛により、一部の光源が今期内に完了できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、65歳以上の被験者の色の知覚により試料の選定を行う際、目安として23人中20人以上が判断した色をそれぞれ白群、黄群、黄赤君、ピンク群とした。99色中61色が被験者の85%が同じ色群と分類する色であった反面、残り38色中26色は判断が分かれ、被験者65%が同じ色群と分類ししたものの、35%が違う色群と分類した色であった。また、被験者の17~34%がどの色にも当てはまらないと判断した色は9色あった。 東日本大震災後、お薬手帳や処方箋が無い中、自分の常用薬を入手するために、薬の外観や色を救急医療スタッフに伝えたという事例から、錠剤の色彩に対する知覚の違いは看過できない。大多数の人が同じ色と判断する色票だけでなく、判断が分かれた色についても、光源にどのような影響を受けるのかも検証する必要があると新たな示唆が得られた。 また、試料の選定段階で、老人性白内障モデルや色弱モデルにおいても検証する必要がある。さらに、今回は日本の錠剤に多いいわゆる白と暖色系の色彩を試料としたが、照明の影響の受けやすさを比較する上ではその他の色、すなわち寒色系(G~P:緑、青、紫)の高明度、低彩度、さらには、高彩度や低明度の色票についても比較検討する必要があると思われる。新型コロナ感染拡大防止のための自粛解除時期を考慮に入れながら実施する予定である。
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Causes of Carryover |
日本色彩学会および、新型コロナ感染拡大防止のため日本薬学会年会が中止となり参加できなかった。また、実験で使用する市販の光源が予定よりも安価に収まったこと、実験に協力いただいく被験者が23名と予定より少なくなったこと、実験の作業量と照らし謝礼の図書カードを予定より安価にしたことなどで減額し、次年度使用額が生じた。 今後は、白内障擬似モデルでの色票選定のための白内障擬似体験用ゴーグルやデータ作成用PCの購入費、また実験参加者への謝礼、情報収集、発表のための旅費などとして計画を遂行する予定である。
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