2020 Fiscal Year Research-status Report
アクティブマターとしての集団精子遊泳のバイオメカニクスと形態進化解析への展開
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18K12052
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
百武 徹 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20335582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 学 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 電子技術部, 主任研究員 (80426361)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 哺乳類精子 / マイクロ流体デバイス / 精子選別 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目は,以下の2つの研究項目を実施した. ①異なる幅をもつ溝付きのマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,実際に精子が遊泳する卵管内の壁面には多くのマイクロスケールの溝が存在していることから,実形状を模擬したin vitro実験となる.実験では牛の凍結ストロー精液を用いて,チャネル内に設けられた溝の幅が遡上する精子分布に与える影響を調査した.画像解析した結果,溝が存在することで精子の分布には違いが見られた.具体的には,溝幅10, 20 μmの流路では,溝が存在する領域において精子分布が大きくなった.原因として,精子の走触性により,溝に近づいた精子の一部が溝にトラップされて溝に沿って遊泳しやすくなるためであると考えられる.加えて,溝が存在することで,精子の平均速度も大きくなった.このことは,卵管内を模擬したマイクロスケールの溝を応用することで,受精に適した高運動性精子を選別できる可能性を示唆している. ②マイクロチャネル内に狭窄を設けることで,精子集積機能を有するマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,狭窄をもつマイクロチャネルにおいて,走流性によって流れに逆らってきた精子は狭窄を通過できず,テーパ部分に運動性の良い精子が集積することを利用している.実験では,チャネル形状やチャネル内流速が,チャネル内の精子分布や精子濃度に与える影響について調査を行った.合わせてOpenFOAMを用いた流体解析によりチャネル内流体挙動の調査も行った.その結果,チャネル形状やチャネル内流速を変化させることで狭窄内の精子の集積場所や精子濃度が変化することが明らかになった.本マイクロチャネルは,実際の受精環境を模擬した高受胎性の体外受精用チップに応用できる可能性がある.今後はさらに異なる形状,流速で実験を行うことでより詳細な傾向をつかむ予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目で確立した卵管内を模擬したマイクロ流体チップの製作・評価のプロセスを,3年目に実施する予定だったが,コロナ禍のため,3年目前半はほとんど実験を行うことができなかった.3年目前半では実験の代わりに,製作予定のマイクロ流体チップ内の流体解析による調査を行った.これにより,精子遊泳の形状依存性を明らかにできた.一方で,3年目後半から行った実験やその評価はまだ十分ではなく,今後の課題として,溝に沿った精子や狭窄部内の精子の集団遊泳について調査を行う必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
実際の体外受精に製作したチップを適用するためには,卵子を用いたin vitro実験が必要不可欠である.3年目後半は2年目と同様に,体外受精卵移植事業で実績のあるJA全農ET研究所の施設を利用することで,ウシの卵子を用いたin vitro実験を行ったが,3年目で得られたマイクロ流体チップ形状に関する様々な知見を活かして,今後はJA全農ET研究所の協力のもと,体外受精への適用を想定して,さらに最適設計されたマイクロ流体チップの開発を行っていく予定である.
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により,2020年度前半はほとんど実験を行うことができなかったため,2021年度は,精子の集団遊泳を中心に,不足している情報を収集するための実験を行う予定である.
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Research Products
(4 results)