2018 Fiscal Year Research-status Report
The British Charity Organisation Society's Philosophies of Charity and Casework
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18K12218
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺尾 範野 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80735514)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イギリス観念論哲学 / トマス・ヒル・グリーン / イデオロギー研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、英国慈善組織協会(COS)の社会福祉思想の哲学的側面を構成したイギリス観念論哲学について、COSのブレーン的存在であったC・S・ロックとB・ボザンケの師であったトマス・ヒル・グリーンの思想に焦点を絞りつつ、研究を進めた。夏期にグリーン研究を国際的に先導する2名の研究者(英国ハル大学コリン・タイラー教授、英国ダラム大学マリア・ディモヴァ=クックソン准教授)を招聘し、国際ワークショップ(2018年8月、早稲田大学)を開催した。本ワークショップで築かれた日英研究者のネットワークをもとに、国際ジャーナル特集号の共同編集を行うことをタイラー教授と申し合わせた。本年度のグリーン研究の成果については、査読誌投稿用の論文に纏めるとともに、MANCEPT Workshops 2018と政治思想学会年次大会で発表した。 COS研究については、2018年9月に渡英し、ロンドン大学図書館等でCOSの機関誌Charity Organization Reviewの主要記事や、世紀転換期イギリスのケースワークに関する文献の収集を行った。ヘレン&バーナード・ボザンケ夫妻のチャリティ思想の分析も進め、研究成果を「第4回近代勤労思想研究会」(2018年9月、武蔵大学)で発表した。 また、COSの思想とイギリス福祉国家思想を、対立的にではなく相補的なものとして捉えるという本研究課題の視角に適した方法論の模索も、2018年度に進めた。その結果、英国の政治学者マイケル・フリーデンが提唱する「イデオロギー研究」の手法が本課題の遂行に適合的であるとの結論に至った。方法論についての研究成果は、論文集の一章として2019年4月に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際ワークショップを予定通り、成功裏に開催することができた。そこで招聘した海外研究者との交流は、申請者のイギリス観念論哲学についての理解を大いに深め、査読誌投稿用の論文執筆を可能にしてくれた。また、本ワークショップの成果を、海外研究者との国際ジャーナル特集号の共同編集という研究企画へつなげることができたことも、本研究課題の遂行にとってきわめて有意義であった。渡英による資料収集も予定通りおこなうことができた。本研究課題の方法論についても研究成果を論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、以下の3点を中心に研究を行う予定である。(1)2018年度の主な研究対象であったトマス・ヒル・グリーンのイギリス観念論哲学について研究成果を査読誌に投稿する。(2)グリーンの弟子であったチャールズ・ロックのチャリティ思想について研究を進め、成果を査読誌に投稿する。(3)COSの社会福祉思想を同時代の日本のケースワーク思想との比較のもとに研究し、成果を国際ジャーナル用の論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
研究資料(書籍等)購入予算の未消化分。2019年度の同予算に組み込み使用する予定。
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Remarks |
当該科研費を用いて実施した国際ワークショップの開催案内
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Research Products
(6 results)