2020 Fiscal Year Research-status Report
The British Charity Organisation Society's Philosophies of Charity and Casework
Project/Area Number |
18K12218
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺尾 範野 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80735514)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 観念論哲学 / 慈善組織協会 / バーナード・ボザンケ / ヘレン・ボザンケ / トマス・ヒル・グリーン / 貧困 / チャリティ / ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウイルスの問題によって、研究全般に大きな支障が生じた。予定した海外での資料収集は断念し、主に国内で入手可能な史資料の読解・分析を進めた。研究内容の進展としては、COSの社会福祉思想について、既存研究が強調してきた個人主義的なケースワーク手法に加えて、貧民と富裕層の協同的・階級協調的なコミュニティ形成もまた夫妻のソーシャルワーク思想において中核的な位置づけを与えられていたことが明らかとなった。この研究成果は、9月20日にオンライン開催された日本イギリス哲学会で報告した(「自立と協同の調和にむけて──ボザンケ夫妻の社会福祉思想──」)。本大会と他研究会(第1回「良き社会の構想」研究会)での報告を通して、夫妻の貧民観・貧困観についても再検討の必要を見出した。 2020年度はまた、COSの中心的指導者であったチャールズ・ロックのチャリティ史研究の読解も進め、ロックがCOSの歴史的意義をいかに評価したのかについても分析を進めた。「科学的慈善」を標榜しつつ、救世軍をはじめ同時代のキリスト教慈善を批判したことで知られるCOSであるが、実はロックの社会福祉思想には、きわめて強いキリスト教倫理が通底しており、これが彼の歴史観の要ともなっていることが、これまでに明らかとなった。 さらに、現代の社会福祉理論との比較検討を行い、COSの社会福祉思想が現代のソーシャルワーク理論でいうところのストレングス・モデルに近い議論を行っていたこと、それに加えて、地域社会(コミュニティ)の形成・発展を視野に入れた個人のストレングス発展を重視した点に、再評価すべき点があることを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス問題の影響によってオンライン授業準備などに多くの時間が割かれ、資料収集、学会報告、論文執筆いずれにおいても予定通りに進んだとはいいがたいため。当初は3年計画であった本研究を1年間延長し、2021年度を最終年度とする。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度はボザンケ夫妻の貧民・貧困論についての分析を完了し、2020年度に分析した彼らのソーシャルワーク思想とあわせて「ボザンケの社会福祉思想」としてまとめ、国際学術誌に投稿する予定である。 また、チャールズ・ロックおよびヘレン・ボザンケのチャリティ史研究の読解・分析を進め、19世紀のイギリス社会思想の基礎であった社会進化論の中における彼らの歴史研究の位置づけを分析し、成果を日本語の投稿論文にまとめる予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより旅費等の支出が予定よりも大幅に減ったため。2021年度冬に行われる国際学会への出張旅費等として用いる予定である。
|
Research Products
(1 results)