2021 Fiscal Year Research-status Report
The British Charity Organisation Society's Philosophies of Charity and Casework
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18K12218
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺尾 範野 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80735514)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慈善組織協会(COS) / バーナード・ボザンケ / チャールズ・ロック / T.H.グリーン / チャリティ / ソーシャルワーク / イデオロギー / リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、COSの社会福祉思想のイデオロギーの位置づけを行った。具体的には、これまでの研究成果であるM・フリーデンのイデオロギー研究の再評価およびT.H.グリーンのニューリベラリズムの再検討をふまえ、グリーンの影響を受けたB・ボザンケとC.S.ロックの社会福祉思想のリベラリズムの特徴を分析した。その結果、両者の思想は、「脆弱な存在の市民権」を説いたグリーンのニューリベラリズムと異なり、「市民=強い個人」を前提にしつつ、「公助」による所得保障の否定と「自助」実践の重要性の強調という古典的リベラルのイデオロギーの枠内にあったことがわかった。以上の研究成果を、早稲田大学先端社会科学研究所が出版する英語論文集の一章に纏めた(2022年度出版予定)。 また、チャリティの歴史と原理について記したC.S.ロックの主著『チャリティと社会生活』を分析し、ロックが上述のCOSのイデオロギーをいかなる歴史解釈から正当化しようと試みたのかの分析を進めた。その結果、ロックがみずからのリベラリズムを、古代ギリシャと古代ローマのシティズンシップ思想への依拠と、パウロのキリスト教思想批判の双方をとおして正当化していることが分かった。この点は、パウロに依拠してクリスチャン・シティズンシップ思想を展開したグリーンとは異なる点であり、従来グリーンの高弟としてのみ位置づけられてきたロック思想の独自性を示すものであるといえる。 なお、フリーデンのイデオロギー研究の再評価に関連して、フリーデンの主著のひとつである『リベラリズムとは何か』の共訳および訳者解説執筆を行った。当該訳書は2021年度に出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ボザンケ夫妻の社会福祉思想について2020年度に行った学会報告の成果を2021年度に論文に纏める予定だったが、校務等によって十分な時間が取れなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、これまでに行ってきた「ロックのチャリティ史解釈」および「ボザンケ夫妻の社会福祉思想」それぞれの研究成果を投稿論文に纏め、前者については12月に行われるイギリス理想主義の国際学会で発表も行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響によって予定していた国際学会への参加を取りやめたため。次年度使用額を用いて2022年度に参加する予定である。
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Research Products
(1 results)