2022 Fiscal Year Research-status Report
The British Charity Organisation Society's Philosophies of Charity and Casework
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18K12218
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
寺尾 範野 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80735514)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イデオロギー / チャリティ / ソーシャルワーク / イギリス理想主義 / リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度以前に実施したイギリス理想主義研究とイデオロギー研究の成果にもとづき、(1)COSの社会福祉思想へのイギリス理想主義の思想的影響、および、(2)COSのイデオロギー的位置について研究を進め、成果を2篇の論文に纏めた。 (1)については、COSの理論と実践に深く精通した人物であるロンドンCOSのヘレン・ボザンケの思想を研究対象とし、Strength of the People (1902)をはじめとする彼女の著作・論文のテキスト分析をおこなった。その結果、ボザンケの社会福祉思想が、ソーシャルワークを通じた地域社会の再生による階級分断の解消および、労働者階級女性にたいする公助・共助の連携による支援に、重きを置いていたことが分かった。以上の研究成果を、『早稲田社会科学総合研究』で発表した。 (2)については、貧困問題をめぐる世紀転換期イギリスの政治的イデオロギーのコンテクストに、COSの社会福祉思想を位置づけることを試みた。具体的には、ロンドンCOSの指導的存在であったC.S.ロックやバーナード・ボザンケのチャリティ論を検討し、同時代の優生思想やニューリベラリズムと比較し、かれらの社会福祉実践論が、古典的リベラリズムに位置づけられることを確認した。以上の研究成果を、英語論文集Sustainable Development Disciplines for Humanityの第1章で発表した。 また、ハル大学応用倫理学研究所よりワークショップに招聘され、イギリス理想主義の思想と実践について、バーナード・ボザンケのチャリティ論について考察も含めつつ、研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COSのチャリティ論とソーシャルワーク思想について、ロンドンCOSの中心人物の思想と実践を多角的に検討し、研究成果を複数の論文に纏め、発表することができたため。また、海外での研究報告をきっかけに、最終年度に注力すべき研究方針が定まったことも有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度となるため、世紀転換期COSの思想と実践が戦間期以降のイギリス福祉国家形成期の貧困対策に与えた影響について検討したい。具体的には、これまでに検討したボザンケ夫妻やロックのチャリティおよびケースワーク思想を社会的シティズンシップ論というより大きな福祉国家思想の枠組みと関連させ、イギリス福祉国家形成期のシティズンシップ論におけるCOSの思想的位置づけの解明を行いたい。研究成果を秋の社会思想史学会で報告した後、英語論文に取り纏め、海外ジャーナルに投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
海外での研究成果発表の予算1回分を用意していたが、当該発表の機会が招聘講演となり、先方(ハル大学)が交通費・宿泊費を負担くださったため。
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Research Products
(3 results)