2021 Fiscal Year Research-status Report
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18K12279
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
栗本 賀世子 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (80779661)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 竹河巻 / うつほ物語 / 入内 / 参院 / 皇妃 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の最大の実績としては、雑誌『国語と国文学』2022年10月号に掲載予定の論文「『うつほ物語』と『源氏物語』竹河巻―入内・参院時の有力皇妃の内諾をめぐって―」が挙げられる。これは、慶應義塾大学国文学研究会(2018年7月7日、於慶應義塾大学)での講演内容に基づくものである。 『源氏物語』竹河巻では、玉鬘の娘、大君が冷泉院の後宮に入るのだが、結婚の前には、母の玉鬘が、自身の姉妹で有力な冷泉院の皇妃である弘徽殿女御から、娘の参院について了承を得たことが記されていた。この皇妃が後宮入りする前に有力な皇妃の内諾を得るという行為は、『源氏物語』以前に成立した『うつほ物語』にも見られるものである。ヒロインあて宮が東宮に入内する際、あて宮の母大宮が、自身の妹で東宮妃となっていた小宮の存在を懸念し、事前に小宮を後見する嵯峨院大后(小宮・大宮の母)に働きかけてあて宮入内の承認を得ていたのである。しかしながら、後に小宮は入内を認めたはずのあて宮に嫉妬し、敵対することになるのであり、この展開も『源氏物語』の竹河巻で弘徽殿女御に大君が迫害されるという筋に合致する。『源氏物語』竹河巻の大君の物語が『うつほ物語』に学んで描かれていることを考察した。 この他、論文化はまだであるが、平安朝物語において、入内を天皇・東宮から望まれるにも関わらずそれを拒否するという事例――『竹取物語』かぐや姫、『うつほ物語』俊蔭女、『源氏物語』葵の上や玉鬘大君など――に着目しており、これに関する先行研究や史上の入内拒否例を調査している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
育児休暇から復職したばかりの一年で、育児と研究の両立がなかなか難しかったため、当初の予定とは異なり、藤壺の宮・玉鬘・明石の姫君の入内問題および皇子女の内裏後宮殿舎での生活についての考察を進められず、論文化できていない。(調査についてはおおむね終えている)
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、後宮に関する様々な事例の調査を行い、その結果を物語内の記述と比較検討したうえで、物語の後宮の設定の意味、作者の意図について考察していきたい。 2022年度はまず、『竹取物語』かぐや姫、『うつほ物語』俊蔭女、『源氏物語』葵の上や玉鬘大君など、平安朝物語における入内が拒否される事例に焦点を当て、物語文学史において「入内拒否」がどのように描かれてきたかを解明することを目指す。 次に、天皇の皇子女の内裏住みの問題を扱い、史上の親王・内親王の内裏居住例と比較しつつ、『源氏物語』の光源氏の青年期の内裏住みについて論じる予定である。 さらに、余裕があれば、先帝の皇女であった藤壺の宮の入内の意味について考察し、平安時代の帝が皇族庇護の理念を抱いていたこと、藤壺入内の裏にも桐壺帝の内親王を庇護しようとする意図があったことを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス流行下で、予定されていた地方開催の対面形式の学会・研究会の多くがオンライン開催に変更となった。それにより、出張費分の使用がなくなり、次年度使用額が生じることとなった。2022年度は、持ち越された分を旅費として使用し、積極的に地方学会等に参加していく予定である。今のところ、2022年秋に地方で開催予定の中古文学学会や、2023年3月にフランス(パリ)で開催予定のシンポジウムに参加することを検討している。
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Research Products
(1 results)