2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12283
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尹 シセキ 名古屋大学, 人文学研究科, 博士研究員 (80761410)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内部発行 / 日中国交正常化 / 軍国主義批判 / 三島由紀夫 / 松本清張 / 小松左京 / 夏堀正元 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、日本国立国会図書館や中国国家図書館「数字図書館」、データベースCNKI、古書市場「孔夫子」などを通じて、「内部発行」で刊行された書籍の所蔵状況を調べた。中国の古書市場から、三島由紀夫『豊饒の海』四部作の「内部発行」本など、希少なものを取り寄せる手続きを行った。 同時に、松本清張『日本改造法案―北一輝の死』(南京大学、1972年)や小松左京『日本沈没』(人民文学出版社、1975年)、夏堀正元『北の墓標―小説郡司大尉』(江蘇人民出版社1977年)を比較しながら、これらの作品と1970年代中国の「日本軍国主義」批判、そして「ソ連修正主義」批判との関連性を分析した。その成果は2019年度に論文として執筆する予定である。 関連する問題として、森村誠一の「731部隊」シリーズが中国に翻訳された経緯を考察し、論文「「日中友好」の時代と戦争記憶――鄧友梅『さよなら瀬戸内海』と森村誠一「七三一部隊」シリーズ」を発表した(共著『東アジアの中の戦後日本』臨川書店、2018年8月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度は妊娠、出産のため、日本国内外の出張調査も予定通りに実現することができず、松本清張や小松左京、夏堀正元の作品分析に不可欠な情報も確認できないものがあった。また、三島由紀夫『豊饒の海』四部作の内部発行本などの取り寄せも、手続きが終わるまでに数ヶ月の時間を要したため、課題の遂行がやや遅れている。したがって、これらの作品に関する論文の執筆と公表も、2019年度の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、松本清張『日本改造法案―北一輝の死』(南京大学、1972年)や小松左京『日本沈没』(人民文学出版社、1975年)、夏堀正元『北の墓標―小説郡司大尉』(江蘇人民出版社1977年)の比較分析を行い、論文として執筆する。 8~9月には、上海への出張調査を予定している。上海档案館や各大学図書館にて、内部発行専門誌「摘訳」を中心に考察を行う。 10月は、「中国における日本文学の「内部発行」-軍国主義批判と三島由紀夫」と題し、第七回東アジアと同時代日本語文学フォーラム(台湾)で研究発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度は妊娠、出産のため、日本国内外の出張調査も予定通りに実現することができず、松本清張や小松左京、夏堀正元の作品分析に不可欠な情報も確認できないものがあった。これらの作品に関するさらなる調査が必要であり、論文の執筆と公表も2019年度の課題として残された。 また、内部発行の全体的状況についても考察しなければならない問題が多く、いずれも中国国内の図書館と档案館で行う必要があったが、2018年度は体調が原因で見送ることとなっていた。 本来2018年度に予定していた以上の調査が、2019年度中に北京や上海などの図書館、档案館を中心に行う計画となったため、次年度使用額が発生している。
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