2018 Fiscal Year Research-status Report
『扶桑略記』の基礎的研究-日本中世の歴史書の総合的理解に向けて
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18K12285
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三好 俊徳 名古屋大学, 人文学研究科, 共同研究員 (00566995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歴史書 / 扶桑略記 / 私撰史書 / 中世文学 / 注釈的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、『扶桑略記』の基礎的検討を推進し、その歴史書としての特徴を明らかにしようとするものである。そのために、①諸本研究、②注釈的研究、③中世の歴史書との比較研究、という3つの研究を実践する。 ①については、国文学研究資料館や東京大学史料編纂所が所蔵するデータベースや写真を活用するとともに、主要伝本の所蔵者に連絡をとり調査の可否や可能であればその時期についての情報入手と打ち合わせを行った。そのなかで、鎌倉時代の古写本である大須文庫本については調査を踏まえて写真を入手し翻刻作業を行った。また、『扶桑略記』の中世寺院における位置づけを明らかにするために、大須文庫の蔵書体系や書物の伝来の経緯についての研究も推進し、それについての研究発表を3回行った。 ②については、論文を掲載した書籍が1冊刊行され、また研究発表を1回行った。論文では『扶桑略記』における聖徳太子像の特徴と後世への影響について論じ、『南岳衡山と聖徳太子信仰』に収録された。6月に説話文学会大会において行った研究発表では、宗論記事の分析から『扶桑略記』全体の宗派意識を論じた。その内容をもとに論文を執筆する予定である。 ③については、中国・四川大学で開催された研究集会において研究発表を行った。『仏法伝来次第』を中心に各地の仏法伝来をいかに記すのかを検討しつつ、『仏法伝来次第』の日本部分の記事の典拠である『扶桑略記』と対比し、その分析を踏まえて日本中世の仏教史叙述の特徴について論じた。論文集を刊行予定であるため、その原稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、当初予想していなかったような状況は起こっておらず、全体的に順調に推進することができている。 諸本調査については、大須文庫本の研究を進めることができた。その作業を行うなかで、本文対校の方針を定めた。次年度以降の諸本調査の基盤ができたと考えている。また、機材を購入するなど、調査を推進するための環境も整えた。 『扶桑略記』の分析や検討についても順調に進めることができており、個別の論文の発表や学会発表を計画通り行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に基づき研究を推進する。諸本調査は、許可がでたところから順次原本調査を実施する。それを踏まえた注釈的検討や他の歴史書との比較研究の成果については、年間2本の論文と2回の学会発表を目標に実行する。
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Causes of Carryover |
伝本調査を複数箇所で行う予定であったが、今年度は所蔵者の都合等により、年度内に1件しか実行することができなかった。打ち合わせは進めているため、次年度以降により重点をおいて原本調査を実施する。主にそのための旅費および謝金として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)