2020 Fiscal Year Research-status Report
『扶桑略記』の基礎的研究-日本中世の歴史書の総合的理解に向けて
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18K12285
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三好 俊徳 名古屋大学, 人文学研究科, 研究員 (00566995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歴史書 / 扶桑略記 / 私撰史書 / 中世文学 / 注釈研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、院政期に成立した『扶桑略記』の基礎的検討を推進し、その歴史書としての特徴を明らかにしようとするものである。そのために、①諸本研究、②注釈的研究、③中世の歴史書との比較研究、という3つの研究を実践する。 本年度は、①については、これまで収集していた情報をもとに、昨年度から本年度にかけて各地の原本調査を行う予定で準備をしていた。しかし、コロナウィルス感染拡大の影響で出張と調査を控えたため、実質的に進展させることが出来なかった。ただし、所蔵者との相談のうえで大須文庫についての調査は行うことができた。大須文庫本『扶桑略記』については、すでに調査と翻刻を行っているが、他の歴史書の原本調査を進めた。また、『扶桑略記』をはじめとする歴史書の大須文庫における位置づけや伝来の経緯についての研究も進めるため、大須文庫の蔵書体系についての調査も行った。その成果の一部を報告書としてまとめたものが、2021年度に刊行予定の書籍に収録される予定である。 ②については、先行研究に基づき、後三条天皇以降の本文の読解を進めた。また、特に戒律関係記事に注目をして、『扶桑略記』の宗派性を分析した成果をもとに論文を執筆しており、2021年度刊行予定になっている。 ③について、新たな資料の調査研究はできなかったが、すでに手許にある資料をもとに基礎的な作業を進めた。特に『扶桑略記』に依拠して成立したと考えられている『水鏡』との本文の対比を行った。また、特に②との関連で、戒律伝来記事を中心に中世に成立した歴史書と比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予想していなかったコロナウイルス感染拡大により、諸本調査は遅れている。『扶桑略記』本文の分析や検討は進めることができているが、総合的にみて、計画段階で重視した諸本研究が進められていないため、やや遅れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
可能な限り、当初の計画に基づき研究を推進する。2021年度が最終年度であるため、これまで十分な検討ができていない諸本調査を重点的に行いたい。状況が落ち着いたところで、調査対象を絞り、改めて所蔵者と相談をして、許可がでたところから順次原本調査を実施する。それを踏まえた注釈的検討や他の歴史書との比較研究の成果については、年間2回の研究発表を目標に実行する。
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Causes of Carryover |
今年度実施予定だった原本調査および研究活動が新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になったため、そのための予算が次年度使用額になってしまった。所蔵者とは打ち合わせを進めており、今年度実施予定だった分の調査は、次年度に実施する予定である。そのための旅費および謝金として使用する。なお、仮に調査が難しい状況であれば、資料写真や関連書籍を購入し、それを用いた基礎的な検討を進める。また、写真データを用いた検討やオンラインでの研究会などの研究活動を行うための情報機器の購入のために使用する。
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