2019 Fiscal Year Research-status Report
近世領主説話と地域社会の創生ー体制移行期の説話研究として
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18K12288
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
南郷 晃子 (中島晃子) 神戸大学, 国際文化学研究科, 学術研究員 (40709812)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 地域伝承 / 近世説話 / 体制移行期 / 地域創生 / 写本 / 領主 / 由緒 / 城主 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、「天狗」や「山伏」のモチーフを持つ領主関連説話に焦点を当てた研究を行った。近世期の領主関連の説話において「天狗」「山伏」は領主と敵対するものとして表象される傾向にある。例えば築城のために敷地内の大木を伐採されたことを契機とする山伏の祟りを語る桑名藩の説話に顕著にみられるような、場を荒らすものとしての築城行為と説話についての考察を進めた。それらを通じ、近世期における天狗が単純な「反権力」を志向するものではなく、公儀の正しさを補強するものであることを指摘した。 また関連して宮大工家日原家伝の文書と、池田輝政宛とされる「天狗の書状」の関係について検証を進めた。播磨地域で活動した宮大工が、姫路藩主池田家をめぐる怪異譚成立の契機とされる「天狗の書状」に関与していると推察されるが、調査の結果、書状の求める「八天塔」建立の技術は、地神祭祀儀礼と絡まり合いながら大工の「家」の由緒として伝授されたものであったことが明らかになった。 加えて近代移行期の事例を確認するため、津山地方の郷土史家事例の研究を進めた。近世より、同地では『太平記』に見える皇族とのつながりが重視されたが、それが旧藩への憧憬と「国家」の中の郷土像の希求により、過剰とも言える「顕彰」へと展開する実態を調査した。これは発表の予定であったが、新型コロナウィルス感染症の流行により延期した。状況が許せば2020年度にあらためて発表する予定である。 また2020年度に向け、松山城築城に関わる説話の調査をはじめた。同地方の地誌にみえる築城に関する説話を、同時代の社会的状況を踏まえながら検証することを予定している。 さらに2019年度は、地域社会創生の運動として領主説話という視点から、上記の研究成果および2018年度の研究成果を含むこれまでの研究をまとめ直し、単著を出す準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度前半は当初の計画通りに、近世期の播磨地方を中心に、天狗と領主伝承に関する研究成果をまとめ説話・伝承学会2019年度大会において発表することができた。 2019年度後半にかけては近代移行期の岡山県北の郷土史家の活動と伝承についてをテーマとし、地域の図書館や神社などにおける調査を順調に進めることができた。また説話・伝承学会における発表をもとにまとめ直した論考を『説話・伝承学』28号にて公表することができた。 しかし年明けは新型コロナウィルス感染症の流行拡大の影響を受け、予定をしていた神話研究会での報告を断念した。また同様の理由により各地の図書館や資料館の休館および国内も移動の制限があり、資料調査十分にができなくなった。2020年度に向けた準備が十分に行えていない。収集済みの資料を中心とした分析、精読などに専念している。 したがって年明け以降は研究の進捗が滞ったものの、それ以前は順調に進めることができた。以上により全体としておおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウィルス感染症の流行により2019年度中は断念した計画を順次行っていく。まずは近代移行期の岡山県の郷土史家の活動と伝承に関する報告・公開を行う。 また松山城に関する説話の補足調査を行う。松山藩を一時治めた「蒲生氏」の役割に注意をしながら検証し、特定の氏族をめぐる近世説話について研究を進め、発表する予定である。加えて説話およびそれを所収する写本の保存に関し伊予史談会をはじめとする郷土研究のグループの活動にも注目をしたい。 さらに当該研究課題の重要なテーマである地域写本について、調査・検証を進め、これまでの研究成果との関連付けを行うことを予定している。特定の地域で写され広まったもののみならず、特定の「家」の内側で記録として伝承されたものも含め、領主説話の伝承・変容に重要な役割を果たすものとして位置付け、検証を行う。中国地方を中心に進めるものとする。 いずれの課題についても現地調査を予定しているが、新型コロナウィルス感染症の流行拡大をめぐる状況次第では現地調査が行えない可能性がある。その場合は、すでに手元にあるものを中心に文献資料の精読、調査に特化し、その研究成果をまとめる予定である。また、新たな調査に全く行けない場合は、これまで研究成果として公開したものを、あらためて調査をした地域社会に還元できる形で読みやすくまとめ直すなど、研究成果を地域社会へ還元する活動を精力的に行うものとする。またオンラインでの研究会参加などの形も検討する。 併せて2019年度に引き続き当該課題の研究成果を含めた単著を出すための準備を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行により予定していた研究会への参加や調査が延期になったため、予定してた出張費が未使用に終わったが、現地調査を補う資料を購入しその差額が次年度使用額として生じた。事態が改善したのちは2019年度に行うはずだった調査や研究会報告を実施するため、その交通費・調査費として使用する。
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Research Products
(3 results)